2018.11.27
OTHER
2018年10月6日、「第9回日EU科学政策フォーラム」が京都で開催された。このフォーラムは、「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」の前日に、駐日EU代表部と政策研究大学院大学(GRIPS)の共催で行われた。
2018年で9回目の開催となる「日EU科学政策フォーラム」は、例年どおり、日本と欧州から主要な科学技術政策立案者や資金助成機関の長、研究者、および産業界の代表など40名を超える登壇者、また同じく40名以上のオブザーバーが出席した。「イノベーションの推進:日本とEUにおける政策的構想と施策」をテーマとした本年のフォーラムは、欧州の次期資金助成計画「ホライズン・ヨーロッパ」と日本の「第6期科学技術基本計画(2021年~2025年)」に向けた準備が進む重要な時期に開催された。
開会のあいさつで、パトリシア・フロア駐日欧州連合(EU)大使はこれまでのフォーラムの歩みを振り返り、2015年の「第23回日・EU定期首脳協議」で採択された共同ビジョン「日本国政府と欧州委員会との間の研究・イノベーションにおける新たな戦略的パートナーシップに向けて」と、本フォーラムをどのように連携させているか、また2018年の「第25回日・EU定期首脳協議」で署名された経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定(SPA)が、研究やイノベーションをはじめ、日・EU間の貿易とより緊密な協力のための大幅な機会増大にいかに貢献するかについて述べた。
また、STSフォーラムの尾身幸次理事長は、日本とEUの既存の協調関係を評価し、「この先1年で、双方の科学技術イノベーションに向けた協力にますます弾みがつくだろう」と語った。乾杯の音頭を取った科学技術振興機構(JST)の中村道治前理事長は、イノベーションの推進が日本とEUにとって相互に利益をもたらすことを強調した。
政策概要報告では、欧州委員会研究・イノベーション総局のジャン=エリック・パケ総局長が、欧州の研究・イノベーション推進に向けた野心的な2021年~2027年を対象とした新資金助成プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」について、その主な特徴を紹介した。1,000億ユーロの予算が提案されているこのプログラムは、「オープンサイエンス」、「グローバル規模の挑戦と産業競争力」、「オープンイノベーション」の3つの柱を設けている。
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)常勤議員の上山隆大博士は、2018年に立ち上がった日本の「統合イノベーション戦略」を紹介し、この戦略により日本の研究・イノベーションのエコシステムがどのように刷新されるかを解説した。また同博士は、大学改革の重要性やデータの役割、予算配分などについても言及。山脇良雄文部科学審議官は、さまざまな研究領域および若手研究者のキャリア促進において、日本とEUが緊密に協働していく重要性を強調した。欧州議会科学技術選択評価委員会(STOA)のエヴァ・カイリ委員長は、EUの科学政策の形成に欧州議会とSTOAが果たす役割を説明するとともに、およびEUの研究・イノベーション助成プログラムのさまざまなステークホルダーとの対話を続けていくことが重要であると説いた。
本フォーラムでは、日本と欧州の政策立案者、助成機関の長、そして研究機関から多岐にわたる観点や洞察が提示された。「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けて、科学技術とイノベーションの力をどのように生かしていくかをはじめ、デジタル技術とイノベーションに必要な人材育成や、研究プログラムの設計、大学発ベンチャー企業の実例に見られる官民の役割と責任分担、また国立の諸研究所がどのように協働ネットワークを構築しているかなどについて話し合われた。
幅広い分野にわたって刺激的な討議が行われた中で、イノベーションを創出しやすい環境やエコシステムの育成のために政府が果たす役割や、オープンデータの重要性、一般市民にも科学に触れて関心を持ってもらう努力、「責任あるイノベーション」の必要性、および市民のためのセーフティネットの提供といったテーマが取り上げられた。
10月7日には京都において、柴山昌彦文部科学大臣とフロア駐日EU大使、欧州研究会議(ERC)のジャン=ピエール・ブルギニョン理事長の立ち会いの下、パケ総局長とJSTの濵口道成理事長が「JSTおよびERC間の研究交流に関わる実施取極め」に署名した。この協定が署名されたことを背景に、科学技術とイノベーションにおける日本・EU間の協力についても討議された。
イノベーションは日本とEUの双方にとって関心が高いことから、これに関連した政策手段や実践例、および環境の枠組みについての情報を、日・EU間で今後どのように共有していくかなどといった、重要な点が多数挙げられた。合同委員会会合をはじめ、量子技術や若手研究者の交流などをテーマにした他の会議において、今後さらに話し合いを続けていく必要があると強調された。
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