2019.11.19

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採択30周年を迎える「子どもの権利条約」とEU

採択30周年を迎える「子どもの権利条約」とEU

人権を基本的価値の一つに据え、域内外で人々の権利の推進や認識向上に努めているEU。「子どもの権利条約」の採択30周年を機に、同条約の意義やEUのさまざまな活動、また今後取り組むべき課題などを浮き彫りにする。

「子どもの権利条約」とは

1989年11月20日に国連総会で採択された「児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約:United Nations Convention on the Rights of the Child=CRC)」は、世界で最も広く受け入れられている国連の条約であり(2019年8月現在 締約国・地域数196)、世界中の子どもたちの生活を向上させる上で中心的な役割を果たしている。その30周年を迎える本年は、全ての子どもたちの権利を守り、推進していくというコミットメントを再確認するための絶好の機会である。

子どもの権利は普遍的で、不可分かつ不可侵である。全ての子どもたちは、いかなる形の暴力、虐待、嫌がらせ、育児放棄からも守られ、安全な養育環境で成長する権利を持っている。欧州連合(EU)は、子どもたち一人ひとりのこうした権利があらゆる場所で尊重・保障されるように最善を尽くすことは、自身の責務であると認識している。子どもが大人へと成長する過程に注力することは、道徳上の義務であり、より良い未来に向けた不可欠な投資なのである。

「子どもの権利条約」採択30周年を祝う国連総会の記念式典でスピーチを行うエクアドル出身の少女(2019年9月25日、ニューヨーク)
© UN Photo/Ariana Lindquist

域内外で子どもの権利を守るEUの取り組み

EUは、子どもたちの生存や発達、保護を担保するために率先して資金援助を行っている。2013年~2017年の間に、EUの対外行動の一環として、142カ国で4,000件を超える子どものための活動を支援してきた。幼少期の子どもが栄養を摂取し、医療や教育を受けられるよう資金を提供することに始まり、自国の少年司法制度を国際的な保護基準に合わせて強化しようとするパートナー国の支援、また、武力紛争や貧困、自然・人為的災害に巻き込まれた子どもたちを助けることにも、EUは率先して取り組んでいる。

さらに、移民・難民問題や人身売買の問題でも子どもに主眼を置いているほか、世界30カ国以上で、児童・強制婚、女性器切除などの問題に対し、阻止、保護および教育と医療へのアクセスに重点を置いた対策を講じている。児童労働に関しては、貿易の取り決め、あるいはグローバルサプライチェーンへの働き掛けや国際的なパートナーシップの支援強化を通じて、EUはそれを一切容認しない方針を打ち出し、強制労働の撲滅を推進している。

子どもの権利を無視した児童労働は、いまだに世界各地で起こっている深刻な問題だ
© UN Photo/Jean Pierre Laffont

子どもの連れ去り問題にも取り組む

子どもの権利条約の採択から30年という節目は、今後の新しい課題に備えるのにふさわしい機会でもある。それらの課題とは、気候変動や急速な都市化、資源搾取、長期化する紛争や人権危機、およびデジタル化などの影響、ならびに女子の機会の不平等、児童労働のリスク、増えつつあるオンライン・オフラインでのいじめの脅威、そして家族から引き離されたり、家庭を失ったりする子どもたちの問題などである。

両方の親と会ったり、連絡を取ったり、一緒に暮らしたりする権利は、同条約で定義されている権利の中でも重要だ(第9条~第11条)。子どもの連れ去りを防止することは、域内外で子どもの権利を促進するEU政策の柱の一つで、この関連で、日本でも共同親権の導入をめぐる議論が行われることをEUは歓迎している。どちらの親とも接触できるという、同条約でうたわれている子どもの権利が正しく尊重・行使されるためにも、こうした進展は不可欠である。

子どもの連れ去り問題に関して、EUは域外の国々に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(以下、1980年ハーグ条約)」の締約と批准を呼び掛けている。1980年ハーグ条約の目的は、不当に連れ去られたり、留め置かれたりした子どもを、政府当局間の協力制度により即時元の居住国に送還させ、以前の状態へ戻すことである。欧州委員会は、同条約の適正な履行を監視しており、例えばハーグ国際私法会議が定期的に開催する「特別委員会」に、EUを代表して参加している。

日本は2014年に1980年ハーグ条約を批准したが、これは長年にわたり、EUや考え方を共有する他の国々が、外交手段などを通じて日本に働き掛けてきた結果として実現した、重要な一歩だといえよう。家族が再び一緒になる権利や面会する権利に関わる司法の判断において、欧州や日本で上記条約が適正に履行されることが非常に重要となっている。

この点に関し、駐日EU代表部は日本の当局に問題提起をしている。不当に連れ去られたり留め置かれたりした子どもが速やかに帰還し、全ての子どもたちが両方の親と面会する権利が実現されるように、国際法および国内法の適切な履行を確保するため、代表部は当分野での進展を今後も注視していく。

両方の親と接触する権利の下、子どもの不当な連れ去りや引き留めを阻止するべく、EUは問題提起を行っている
© European Union, 2014

子どもたち自身が行動するキャンペーンを日本でも実施

子どもの権利は、現在も将来にわたっても実現されるべきものであり、何よりも子どもたち自身が参加する形で実現させていく必要がある。

EUと国連児童基金(UNICEF=ユニセフ)は、子どもの権利条約、特に子どもが自分の意見を表明する権利を規定した第12条の履行に寄与することを目指し、「#TheRealChallenge」と銘打ったソーシャルメディアキャンペーンを開始した。自身の問題に直接取り組まずして解決はないと考え、子どもたちが自ら意見表明できる場を提供することとしたのだ。

「#TheRealChallenge」キャンペーンを通じて、EUは子どもたちの声に耳を傾け、彼らの悩みや抱える問題をより良く理解したいと考えている。そうすることで、子どもたちのニーズにより良く応え、より適切に意思決定を行うことに役立つだろう。世界各国のEU代表部は、ソーシャルメディア上の若い「インフルエンサー」たちに協力を依頼し、このメッセージを拡散している。

#TheRealChallengeの下、日本のTikTokクリエーターたちに制作・投稿してもらった動画は以下のとおり。

Bullying(いじめ)
https://vt.tiktok.com/RRFN99/

Equality(平等)
https://vt.tiktok.com/RdsBJn/

Family Unity(家族の結合)
https://vt.tiktok.com/RdbwwC/

若い人たちに理解してもらいたいのは、子どもの権利は普遍的ではあるが、当たり前にあるものと考えてはいけないということだ。子どもの権利はこれまで確実に実現してきたが、その進展は均等とも公平ともいえず、まだやるべきことはたくさんある。こうした認識から、「#TheRealChallenge」キャンペーンは始まった。そしてEUとユニセフの共同キャンペーンの動画で描かれているように、世界中には権利を奪われ、大変な困難に直面している子どもたちが大勢いる。青少年や子どもたち自身が積極的に取り組む活動は、意思決定を行う大人であるわれわれにとっても、重要なインスピレーションとなっていくだろう。

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