2018.7.23
EU-JAPAN
欧州連合(EU)と日本の間で行われる貿易と投資の不均衡を是正し、両者の経済関係をより緊密にしていくことを目指して設立された日欧産業協力センターは、2017年に30周年を迎えた。今や日・EUの枠組みにとどまらず、グローバルな視野に立って協力関係を展開する、幅広い同センターの役割を紹介する。本記事は、日本側・EU側を代表する2人の同センター事務局長による共同寄稿である。
日欧産業協力センター(EU-Japan Centre for Industrial Cooperation)は、EUの欧州委員会(域内市場・産業・起業・中小企業総局)と日本政府(経済産業省)が、産業協力を担う中核的組織として共同で設立した、ユニークなベンチャー事業だ。
昨年、日欧産業協力センターは30周年を迎えた。1987年の設立以来、欧州委員会と経済産業省はこの先駆的な共同事業を展開し、豊富な経験を積み上げてきた。この間に当センターは、特に日本とEUの政治・経済の急速な変化や、グローバル化とグローバルバリューチェーン(世界規模の価値連鎖)を広めてきた。30年間にわたる協働によって築いてきた信頼は、たとえ目に見えなくとも、第三国、特に日本と交流する上で重要であり、また当センターが今後果たしていく役割をさらに強める土台となっている。
同時に、日欧産業協力センターは、日本とEUの政策を遂行するほか、経済情報を収集したり、双方の市場へのビジネスアクセスを促進させたりするなどの活動も行っている。当センターは、東京とブリュッセルにそれぞれ置かれている事務所を拠点に、日本と欧州の双方で活動している。
日欧産業協力センターは、以下の分野に注力している。
企業パートナーシップ、クラスター間協力、学生企業研修(「ヴルカヌス・プログラム」)、公共調達ヘルプデスク、技術移転ヘルプデスク、イノベーション、エンタープライズ・ヨーロッパ・ネットワーク(EEN)、日本で展開されるEUの研究開発助成プログラム「ホライズン2020」コンタクトポイント、日・EUビジネス・ラウンドテーブル(BRT)などを通じて、産業とイノベーション分野での協力関係を推進する。
欧州製造業の管理職を対象とした研修プログラム「WCM(World Class Manufacturing)」で、愛知県にある研修センターを訪問する参加者
© 日欧産業協力センター
日・EU経済連携協定(EPA)を最大限に活用し、推進する。欧州と日本の企業、特に中小企業は、この協定で創出されるビジネスの機会について必ずしも認識しているわけでなく、また第三国へ輸出する際に協定の条項や特恵税率から得られる便益についても、十分に把握していないケースが多い。そのため、これらの企業を対象に認識を促し、ガイダンスを行う。
次の3点を促進し、投資協力を強化する。(1)EU企業による日本での投資、(2)日本企業による欧州での投資、(3)EUおよび日本企業による第三国での共同投資。第三国での投資では、例えばアフリカやASEAN(東南アジア諸国連合)の国々の市場へより良くアクセスできるようにし、協力関係を構築する。
日欧産業協力センターが行っている活動には、例えば次のようなものがある。
BioJapan 2017におけるバイオテクノロジー・ミッション共同ブース
©(株)JTBコミュニケーションデザイン
2017年にヴルカヌス・プログラムで来日した研修生
© 日欧産業協力センター
今年5月16日、日・EUビジネス・ラウンドテーブルの日本側議長(当時)の佃和夫氏(三菱重工業株式会社相談役、写真左)とダニー・リスバーグ氏(欧州ビジネス協会会長、写真中央)が、共同提案書を安倍晋三首相に提出。リスバーグ氏は、前EU側議長のエリック・シュルツ氏(ロールス・ロイス民間航空部門社長)の代理として出席した
© 日欧産業協力センター
日欧産業協力センターの役割は、今では日・EU間の関係を超えたものになっている。保護主義が拡大し、地政学上の不安定感が強まるグローバル環境の中で、日本とEUが持続的な協力関係を保ち、開放市場がもたらす便益を守り、公平な立場を保証し、また回復力の高い経済と包摂的な社会を追求することに共に立ち向かっているという政治的なシグナルを、当センターは発信し続けている。
※ 本記事は、日欧産業協力センターの2人の事務局長(日本側:大隅正憲氏、EU側:フィリップ・ドゥ・タクシ・デュ・ポエ〈Philippe de Taxis du Poet〉氏)から共同で寄稿いただいた。
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