2014.6.27
FEATURE
駐日欧州連合 (EU) 代表部主催による「欧州留学フェア2014」が、2014年5月16日、17日に東京(明治大学駿河台キャンパス)で、18日に京都(同志社大学今出川キャンパス)で、開催された(※1)。今年で3回目となる同フェアには、欧州十数カ国より60余りの高等教育機関が参加し、欧州留学に関心を持つ学生、大学関係者、計2,100人(東京会場1,500人、京都会場600人)が訪れ、過去最高の来場者数となった。
会場には欧州各国の大学や関係機関などのブースが設置され、留学希望者はその大学職員に授業内容や留学手続きについて質問できる。通訳を介して質問することもできるが、現地職員と学生が英語やフランス語で直接やり取りする場面もみられ、国際的な雰囲気の中で進行した。フェアを訪れた学生は、「それぞれの国の大学全体の話や、奨学金についても聞けてよかった。ホームページの見方など情報収集の方法も教えてもらったので、これから役立てたい」と語っていた。
また、別会場では「英国留学」「スウェーデン留学」など、国ごとのプレゼンテーションも行われ、それぞれの国や機関が自国への留学の魅力をアピールした。プレゼンテーションでは大学の紹介にとどまらず、それぞれの国での生活や、学生向けのサポート態勢などについても、スライドを使った詳細な説明が行われ、集まった学生たちは熱心に耳を傾けていた。
同フェアには、EUの奨学金プログラム、エラスムス・プラスや、博士課程の奨学金を担うマリー・スクウォドフスカ=キュリー・アクションズを説明するブースが出されたほか、それらのプレゼンテーションも行われた。
留学フェアに参加した、欧州の大学担当者に聞く
「欧州留学フェア2014」に出展した大学のうち、フランスのトゥールーズ大学とスウェーデンのルンド大学の担当者に話を聞いた。
トゥールーズ大学国際情勢部次長 航空宇宙高等学院 (ISAE) 創立会員
ミカエル・ステパノフ (Mikhail Stepanov) 氏
トゥールーズ大学は1229年に設立された、ヨーロッパで最も古い大学のひとつです。幅広い分野の学問を提供していますが、特に評価が高いのは航空・宇宙学、数学、コンピューター科学、化学など。約12万人の学生が在籍し、1万5,000人以上の留学生を受け入れています。日本からの留学生も少数ですが本学で学んでいます。
人口約85万人を誇るフランス第4の都市、トゥールーズには、エアバス社の本社やデザインオフィス、多くの工場があり、当大学はそのような欧州の航空宇宙産業の中心地に位置する伝統ある大学です。
フェアには今年初めて参加しましたが、当大学に興味を持つ人が想像以上に多いことはうれしい驚きでした。学生の関心は、農学や建築、経済、工学、金融、薬学、スポーツなど、さまざまでした。また、フランス語が堪能な学生もいればそうでない学生もいて、フランス語があまり得意でない学生は、英語のコースを探していましたが、当大学では、学部の授業はフランス語で行われています。修士課程では英語の授業が多数あり、自然科学、工学や経済学、経営学などのコースを提供しています。
今回のフェアには、もっと多くの日本の学生に当大学への留学を考えてもらうことと、日本の大学との提携を拡大することを目的に参加しました。いくつかの大学が本学との提携を希望していますので、これからさらに話を進めていきたいと考えています。
留学のメリットのひとつは、多様な価値観に触れて、柔軟な考えができるようになるということです。例えば日本の企業は既存の方法を変えたがらない傾向があるようですが、国際社会では変革が求められています。留学し、他国の文化を柔軟に吸収できるようになれば、その経験を仕事での成果につなげられるでしょう。トゥールーズのような先端産業の中心都市にある大学への留学は、そのような経験を得るのに、大変適していると思います。本学も、日本の優秀な学生を、多く受け入れたいと願っています。
ルンド大学インターナショナル・リクルートメント・コーディネイター
ヨハン・グナルソン (Johan Gunnarsson) 氏
スウェーデンの南部にあるルンドは、「大学都市」と呼ばれています。1666年に創設されたルンド大学は、歴史と品格を有し、優れた研究環境と近代性を併せ持つ大学です。在籍する学生は約4万7,700人で、そのうち留学生は6,400人と全体の約15%を占めています。欧州からの留学生が主ですが、域外では中国、米国、インドからの学生が多く学んでいます。
日本からも、交換留学や個人での留学として、毎年30~40人が入学しています。日本人留学生は、熱心に学んでいますし、スウェーデン人や他国の多くの学生と親交を深め、学生生活を有意義に送っています。唯一の課題は、英語の語学力が不足している学生が多いことです。当大学には英語で行われる多彩なプログラムがあり、授業では学生の積極的な参画が求められるため、英語スキルは必要不可欠です。
今回のフェアでは、50名ほどの学生が当大学のブースに相談に来ました。学生たちはさまざまな興味を持って訪れましたが、中でも社会科学を学びたいという質問を特に多く受けました。それが教育学や、福祉よりも多かったことに驚きました。フェアに参加した目的は、主に大学院生に留学してもらうためでしたが、短期留学も含め、さまざまな留学生を受け入れたいと考えています。
かつては東アジアの学生の留学先といえば北米が多かったのですが、今では欧州をはじめ、他の地域にも関心が広がりつつあります。エラスムス・プラスは、そうした学生たちの新しいニーズに応える制度だと思います。
高等教育の学位をどこで取得するかで、その後の人生が大きく左右されます。国際的に活躍できる人材の多くは複数の異なる国で複数の学位を取得しています。国際的な環境で得た経験が、その人の専門性に大きく寄与します。エラスムス・ムンドゥス、これからはエラスムス・プラスが、その経験を得るのに役立つと思います。
2014年10月9日 更新
(※1)^「欧州留学フェア2014」は、Campus France-フランス政府留学局・日本支局、ドイツ学術交流会(DAAD)、明治大学、同志社大学および欧州委員会(教育・文化総局)の共催、そして外務省、文部科学省、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)、同法人日本学術振興会、特定非営利活動法人国際教育交流協議会(JAFSA)、千代田区、京都府および京都市の後援にて実施された。
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