2024.4.19

WHAT IS THE EU?

EUへの加盟と拡大

EUへの加盟と拡大

EU拡大の歴史

第二次世界大戦後の1950年、フランスのロベール・シューマン外相が、自国と西ドイツ(現ドイツ)の対立の火種となっていた重要資源の石炭・鉄鋼の共同管理を提唱しました。この提案にベルギー、イタリア、ルクセンブルク、オランダも加わり、1952年に6カ国による欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足しました。

ECSCはその後、欧州経済共同体(EEC)、欧州経済共同体(EC)へと進化し、1973年にはデンマーク、アイルランド、英国(第1次拡大)が、1981年にはギリシャ(第2次拡大)、1986年にスペイン、ポルトガル(第3次拡大)が加盟しました。

その後、欧州連合(EU)条約(通称マーストリヒト条約)の発効を受け、1993年にEUが誕生。以降、1995年にオーストリア、フィンランド、スウェーデン(第4次拡大)がEUに加盟し、2004年5月には、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロヴェニアの中・東欧8カ国、そしてキプロスおよびマルタの地中海の島国2カ国の合計10カ国が加わりました。3年後の2007年にはブルガリア、ルーマニアの2カ国も加盟。第5次拡大は、加盟国が15カ国から27カ国へと増える歴史的なものとなり、2013年にはさらにクロアチアも加わって加盟国は28カ国まで増えました。しかし、2020年に英国が脱退。EU創設以来初めて、加盟国の脱退を経験することとなりました。

2022年2月に、ロシアのいわれのない不当な侵略を受けたウクライナがEUへの加盟を正式に申請。続いてジョージアとモルドバも同様に申請しました。欧州理事会は2022年6月、ウクライナとモルドバにEU加盟候補国の地位を与えることを決定。2023年12月には、ジョージアについても加盟候補国の地位を与えることを決めたほか、ウクライナとモルドバの加盟交渉の開始を承認しました。また、2022年12月にEU加盟候補国に認定されたボスニア・ヘルツェゴビナを巡っては、欧州理事会が2024年4月、加盟交渉開始を決定。コソボは2022年12月に正式に加盟申請しました。

EU拡大の歴史

加盟国
1952ベルギー、フランス、ドイツ(旧西ドイツ)、イタリア、ルクセンブルク、オランダ(ECSC原加盟国)
1973デンマーク、アイルランド、英国(第1次拡大)
1981ギリシャ(第2次拡大)
1986スペイン、ポルトガル(第3次拡大)
1990東西ドイツの再統一により、旧東ドイツが編入
1995オーストリア、フィンランド、スウェーデン(第4次拡大)
2004キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア(第5次拡大)
2007ブルガリア、ルーマニア(第5次拡大の完了)
2013クロアチア
2020英国が脱退(2024年4月現在、加盟国は27カ国)

EUに加盟するには

EUに加盟するためには、申請国が満たすべき主要条件があります。1993年にデンマーク・コペンハーゲンで開催された欧州理事会において定められた「コペンハーゲン基準」に基づき、EU加盟を希望する国は、次の3つの基準を満たす必要があります。

  • 政治的基準:民主主義、法の支配、人権およびマイノリティの尊重と保護を保証する安定した諸制度
  • 経済的基準:正常に機能する市場経済およびEU域内の競争や市場の力に対応できる能力
  • 法的基準(EU法の総体「アキ・コミュノテール、略してアキ」の受容):政治・経済・通貨統合の目的の順守など、加盟国としての義務を担い、効果的に実施する能力

加盟プロセスも大きく分けると、①加盟候補国に認定、②加盟交渉、③交渉完了の3段階があります。

① 加盟候補国に認定

加盟申請を受けて、欧州委員会が当該国の準備が整っているかに関する「意見書(Opinion)」を作成。それを基に準備ができていると全EU加盟国が判断すれば、EU理事会は全会一致の決議で、正式な加盟候補国と認定します。

② 加盟交渉

EUは加盟候補国とアキの35の政策分野(章=Chapter) ごとに交渉を行い、加盟候補国はアキを適切に適用・履行するための国内法の改正や、加盟基準(accession criteria)を満たすために必要な司法・行政・経済の改革を実施します。交渉のペースや交渉期間はさまざまです。

③交渉の完了

加盟がEU全体から承認されると、既加盟国それぞれの代表と加盟候補国との間で加盟条約を締結します。加盟条約が締結されると、加盟候補国は加盟予定国(acceding country)となります。その後、加盟条約が加盟予定国および全てのEU加盟国で批准されれば、条約の規定に則った日付をもって正式なEU加盟国となります。

加盟予定国は正式な加盟国となるまでの間、EU法、コミュニケーション(政策文書)、勧告、イニシアティブなどの原案について意見を述べることができ、またEU諸機関において「アクティブオブザーバー」(発言権はあるが、投票権は持たない)の地位を得るなど、特別な取り決めの恩恵を受けることができるようになります。

EU加盟国と候補国および申請国(2024年3月現在)

EU加盟国・加盟候補国・潜在的加盟候補国・加盟申請中の国一覧

国名加盟申請年月交渉開始年月加盟年月
原加盟国ベルギー1952年7月 (ECSC発足)
ドイツ(当時西ドイツ)
フランス
イタリア
ルクセンブルク
オランダ
加盟国デンマーク1961年8月/1967年5月1970年6月1973年1月 (第1次拡大)
アイルランド1961年8月/1967年5月1970年6月
ギリシャ1975年6月1976年12月1981年1月 (第2次拡大)
スペイン1977年7月1979年2月1986年1月 (第3次拡大)
ポルトガル1977年3月1978年10月
オーストリア1989年7月1993年2月1995年1月 (第4次拡大)
フィンランド1992年3月1993年2月
スウェーデン1991年7月1993年2月
チェコ1996年1月1998年3月2004年5月 (第5次拡大)
エストニア1995年11月1998年3月
キプロス1990年7月1998年3月
ラトビア1995年10月2000年2月
リトアニア1995年12月2000年2月
ハンガリー1994年3月1998年3月
マルタ1990年7月2000年2月
ポーランド1994年4月1998年3月
スロヴェニア1996年6月1998年3月
スロヴァキア1995年6月2000年2月
ブルガリア1995年12月2000年2月2007年1月
ルーマニア1995年6月2000年2月
クロアチア2003年2月2005年10月2013年7月
加盟候補国トルコ1987年4月2005年10月
北マケドニア2004年3月2020年3月(交渉開始決定)
モンテネグロ2008年12月2012年6月
アルバニア2009年4月2020年3月(交渉開始決定)
セルビア2009年12月2014年1月
ボスニア・ヘルツェゴビナ2016年2月2024年4月(交渉開始決定) 
ウクライナ2022年2月2024年6月 
モルドバ2022年3月2024年6月 
ジョージア2022年3月  
潜在的加盟候補国コソボ2022年12月
* 1967年~1993年は欧州共同体(EC)
* デンマークとアイルランドは1961年8月に最初の加盟申請をしたが交渉は中断
*英国はデンマークおよびアイルランドと同様に1961年8月と1967年5月の申請の後、1973年に加盟。2021年に脱退(離脱)

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