2014.6.23
FEATURE
駐日欧州連合(EU)代表部は、日・EU 貿易投資促進キャンペーン「EU Gateway Programme」(文末の囲み記事参照)の一環として、EU 加盟国の高品質で個性あふれるインテリアデザインを紹介する展示・商談会、「european design 2014」を3月26日~27日、シェラトン都ホテル東京(東京都港区)で開催した。
ヨーロッパの選りすぐりのインテリアデザインを紹介する「european design」。7回目となる今回は、16のEU加盟国から43社が出展。家具をはじめ、照明、テーブルウェア、テキスタイル、陶器、アクセサリーなど、機能的・個性的で洗練された製品の数々が紹介された。
展示会は、ホテルの大広間2部屋とその周辺の空間を使って行われた。デザイン展示会にふさわしく、各ブースの規格は統一されつつも展示された製品やディスプレイの仕方は個性的なものばかり。訪れた日本の輸入代理店、ショップ関係関係者らはそれぞれのブースや、会場内に設けられたカフェテリア「european design café」で商談やデザインの話を熱心に行っていた。また、訪日した企業は、滞在期間中、セミナーへの参加や都内や近郊の専門店、セレクトショップなどの視察を行い、日本のインテリア市場の現状やデザイントレンド、ビジネスを行う上での情報を得る絶好の機会となった。
今回、出展した企業の中から、小規模ながら、使い勝手が良くデザイン性に富んだ製品を生み出している4つの企業に話を聞いた。斬新なアイデア、伝統と新しさの組み合わせの妙、日々の生活を楽しいものにするためのデザイン。そんな個性的なデザインのクリエイターたちだ。
グルーパ プロダクツ (クロアチア) / Grupa Products (Croatia)
2013年7月にEUに加盟したクロアチア。そのクロアチアから今回初めてeuropean designに参加したのは、フィリップ・デスポット(Filip Despot)、イヴァナ・パヴィック(Ivana Pavic)、チハナ・タラバ(Tihana Taraba)の3人が経営するグルーパ スタジオ(Grupa Studios)。もともとは、クロアチア最古の名門、ザグレブ大学の建築学科で同級生だった3人が2006年の卒業時に結成したクリエイティブ集団であったが、2012年末に「世界に向けて製造・輸出をしていく」という目標を掲げ、企業となったもの。現在では「グルーパ プロダクツ」というブランド名の商品を持ち、事業を展開している。3人全員が、オーナーであり、CEO(最高経営責任者)であり、クリエイティブディレクターという、ユニークな企業だ。
グルーパ プロダクツ ブランドは、照明器具のシリーズ、「ILI_ILI」 、「ARIGATO」 、「MODEL」の企画・製造・販売を中心に展開している。中でも、カラフルなILI_ILIは数々のデザイン賞を受賞し、注目を集めている。実は、このILI_ILIのデザインを決める際、3人の意見がなかなかまとまらなかったという。議論を重ねているうちに、「それならば、組み合わせで、いろいろな使い方ができるようにしよう」と閃き、3つの基本タイプに9色のテキスタイルケーブルを自由に組み合わせることができるランプ、ILI_ILIが生まれた。3人ともが納得できる製品が完成、デザイン賞という評価も得て、順調な販売へと進んでいったという。3人はこのように議論を常に重ねながら製品を作っている。「この3人だから、世界を相手に事業ができている。3人というのは、ちょうどいい人数です」と口を揃える。
ARIGATOシリーズは、ランプがまるでお辞儀をしているように見えることから日本語の「ありがとう」という名前を付けた。日本を意識して作られた製品というわけではないが、今回日本でARIGATOを紹介することになったのも何かの縁。「お客様はホテルやショールームから家庭まで、と幅広いんです。東京で、さまざまなデザインシーンを見ましたが、私たちのデザインも日本の人に気に入ってもらえるのではないかと思いましたし、そうなることを祈っています」と、3人は今後の日本での展開をとても楽しみにしている。
グリーンワークス (スウェーデン) / Greenworks (Sweden)
グリーンワークスは、プラントウォール(植物で作られた壁や仕切り)と、植物を生かした独自のリビング家具の生産・販売をしている。創業者の一人であるマネージングディレクター、ペール・ベルイルント(Per Berglund)さんに話を聞いた。
商品開発のきっかけは、自分のオフィスに緑が足りないと感じ、プラントウォールを取り入れて、壁一面を植物でいっぱいにしようと考えたことからだった。ところが、プラントウォールは大企業でしか導入できないような高い値段だった。そこで、自分たちで1年間かけて作ったものをより使いやすい形にして売り出そうと商品化したものが、キャスター式で移動できる両面プラントウォール、MOVING HEDGEだ。
最初の顧客は英国の会社で2010年のことだった。その後、販売先も増え、オフィスではパーティションとして、娯楽施設ではコーナー装飾に使われている。また、駅など公共の空間にも置かれ、緑が人々の目を癒している。同社は他のプラントウォール製品も手掛けており、それらは皆、空気の浄化や吸音そして空間を美しくするというさまざまな効果を持つ、と好評だ。
現在の顧客は、オフィス、レストラン、ホテルが8割を占めているが、今後は商品の幅を広げることで、一般家庭にも販路を広げていきたいとのこと。今回初めて日本のインテリアショップを視察し、日本に製品を販売していきたいという気持ちが強くなったベルイルントさん。「視察した感触では、日本ではBABYLONE(植物を入れることのできる球体のペンダントタイプの照明)が受け入れられるのではないかと感じました。この商品などから広く販売していきたいと考えています」と日本での展開に期待をみせる。グリーンワークスでは今後、近年注目の屋内緑化のニーズに応える製品を開発していくそうだ。
リンジー アルカー ファブリックス & ウォールペーパー (英国)
Lindsay Alker Fabrics & Wallpapers (United Kingdom)
英国のテキスタイルデザイナー、リンジー・アルカーさんはシルクスクリーンでプリントした生地や壁紙を制作している。GIVANCHY(ジバンシー)、CHANEL(シャネル)、GAP(ギャップ)など、大手ブランドのテキスタイルデザインを手掛けてきた経験を持つアルカーさんは、「流行のファッションだけではなく、長く続く伝統的なものに関わりたい」という思いを強く持ち、自身のブランドを立ち上げた。
「私の思いは、ウィリアム・モリスの『アーツ&クラフツ運動』と重なる部分が多いんです」と話すアルカーさん。19世紀の英国で、産業革命によって大量生産されるようになった商品から失われた美しさを取り戻そうとした思想であり運動だ。その思想からインスピレーションを得たものが、彼女の作品に表現されている。そしてそこに、さらに現代的な幾何学模様なども取り入れ、新しい伝統となる美しさを生み出している。手作りの版によるシルクスクリーンでは、模様に不揃いなところがあり、それが独特の風合いとなる。また、手作りのため全く同じものはできないということも魅力のひとつだ。
2009年にコレクションを立ち上げ、翌年には最初の展示会を行った。アルカーさんデザインのファブリック製品や壁紙は、英国ではすでに大きなホテルや百貨店の調度品として人気がある。「伝統的な中に新しさを取り入れた柄だからこそ、10代から年配の方まで、年齢を超えて多くの人たちに受け入れられているのだと思います。日本の方もきっと私の作品を気に入ってくれると思いますよ」と自信を見せた。製品を見た日本人バイヤーからは、落ち着いた色使いが和の風合いを醸し出しているとの反応が多く寄せられたそうだ。
スーンサロン (オランダ) / soonsalon (Netherlands)
スーンサロンは、インテリアのアクセントになる置き物、室内装飾品、アクセサリーなどを手掛けている。「毎日の生活をより快適で素敵なものにすること、手にとった人に微笑みをもたらすことを目的に作っています」と、オーナーのシーラ・プロメンスヘンケル(Sheila Prommenschenckel)さん。
もともとはスポーツ用品の会社を経営し、テニスラケットなどの製造・販売をしていた。そんな中、自分の好きなデザイン製品の製造と販売もしてみたいと考え、デザイナーたちと組んで事業化した。最初の仕事はパターンデザイナーからの依頼で、「このパターンをよりかっこよく見せるアイデアはないだろうか」との相談だった。提案はうまくいき、世界中に展開するパリ発の人気ファッションブランド、Paul&Joe(ポール&ジョー)の店舗の壁紙として使われた。世界中の店舗でスーンサロンの壁紙が使われたことは、日本でのビジネスのきっかけにもなった。
現在は夫や母親らと会社を経営している。「家族だからこそ100パーセントの信頼ができるし、仕事をしていてとても楽しい」と話す。売り上げの8割を輸出が占めるため、出張も多いが、家族を大事にする彼女は海外出張に子どもたちを連れて行くこともある。
スツール、置き物からペンダント、イヤリングなど、多彩な製品を展開しているスーンサロン。デザインへのこだわりは、「ディテールを最も重視し、さりげない演出を大切すること」。スーンサロンの製品はすでに日本の店舗にも並んでおり、東京では表参道のMoMA DESIGN STOREなど15店、その他全国26店で扱われている。
今回話を聞いた4つの企業は、小規模な会社ならではのユニークさ斬新さが感じられる。伝統を守りながら新しさを加えていくという発想も、歴史あるヨーロッパならではかもしれない。また、機能的であって、楽しさ美しさを併せ持つのも特徴と言えそうだ。日本ではまだあまり知られていないブランドも多いが、今回のeuropean designをきっかけに、近い将来、彼らのインテリアデザイン製品を日本のあちこちで目にする日が来るかもしれない。
EU Gateway Programme |
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EU Gateway Programmeは、日本でのビジネス発展に取り組む EU 加盟国の企業を支援するため、EUの予算により運営されているプログラム。加盟国の厳選された企業を日本に紹介、日本の企業がEUの企業の製品・技術に触れ、情報交換や商談を行う機会を提供している。2009年~2014年に対象としてきたのは技術分野として「環境・エネルギー関連技術」、「医療・ヘルスケア製品・技術」、「建築資材・建設資材」、「情報通信技術」の企業、そしてデザイン分野として「インテリアデザイン」、「ファッションデザイン」の企業。今回のeuropean designは、インテリアデザインの展示・商談会である。 |
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