2017.2.28
FEATURE
宇宙分野でさまざまな国や機関と協力関係を結んでいるEUにとって、日本は緊密なパートナーであり、今後宇宙戦略を推進していく上で日本との協力は欠かせない。PART 2では、宇宙分野における日・EUの協力体制、日本における宇宙産業協力の拠点である日欧産業協力センターの活動などを紹介する。
EUの宇宙戦略にもうたわれている通り、宇宙はいずれかの一国ではなく全人類に属する世界共通のものである。EUは国連やその他の適切な多国間フォーラムの枠組みにおいて、「宇宙活動に関する国際行動規範」を提案し、宇宙空間での国際ルールに基づいた各国の責任ある行動を推進することに尽力している。また、宇宙関連の国連の協定に沿って、宇宙活動を行う者ならびに宇宙物体や宇宙ゴミの増加がもたらす問題の解決でも先導的な役割を担っていきたいと考えている。
EUは自身が提示するこのような検討課題に共に取り組むさまざまな国や機関と連携しており、日本は宇宙分野でのEUの密接なパートナーである。日本とは2013年の日・EU首脳協議で正式な宇宙政策対話を開始することが決まり、2014年10月と2016年3月の2回、会合が開催された。日・EU宇宙政策対話には、日本からは国家安全保障会議、外務省、文部科学省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、環境省の代表者が、また欧州からはEUの欧州対外行動庁(EEAS)と欧州委員会、および欧州宇宙機関(ESA)の代表者が参加している。その内容は航法(測位)システムや地球観測から研究や宇宙における国際協力まで多岐にわたっている。
宇宙空間における国際行動規範についての議論は、宇宙対話の重要な要素であり、日本とEUは緊密に連携しながら国際的な枠組みの確立を目指している。また宇宙空間における軍拡競争抑止に向けた取り組みも継続しており、それは国連の軍縮アジェンダにおいても中核的な役割を果たしている。
コペルニクス計画では、日本とEUの協力を一層推し進めることができる有望な分野が数多くある。例えば地球観測や気候変動に関連した「二酸化炭素モニタリング」や「海洋モニタリング」、「自然災害管理のサポート」などが挙げられる。コペルニクスのデータや情報は国際パートナーを含むあらゆるユーザーに対して完全にオープンで、無料で利用可能となる予定だ。コペルニクスのデータを日本側と共有していくための今後の議論は、相互主義に基づくことになる。
衛星航法システムの利用では、日本とEUが力を合わせて取り組めそうなアプリケーション分野が数多くある。例えば、自動運転システム、3次元(3D)マッピング、鉄道、農業、全地球衛星航法システム(GNSS=Global Navigation Satellite System)の標準化などだ。また、受信機、緊急通報システムなどの新サービスにも大いに協力の可能性がある。直近の宇宙対話では、自動運転、鉄道、農業およびGNSS標準化などのアプリケーション分野でさらに協力を進めていくことで既に合意している。
日欧産業協力センターによる日・EU宇宙協力の事例 GNSSは非常に高い将来性を有す分野であるにもかかわらず、日本ではなかなか市場開拓が進んでいない。そこで2012年よりガリレオ計画の日本国内での商業利用についてプロモーションを担当してきたのが、日欧産業協力センターだ。 ガリレオ計画の日本におけるプロモーション活動は、「GNSS.asia」プロジェクトの枠組みで行われている。GNSS.asiaは、EUの研究・イノベーション枠組み計画「ホライズン2020(Horizon 2020)」の助成を受け、EUと中国・インド・日本・韓国・台湾の間で、GNSS における産業協力を推進するために立ち上げられた。アプリケーションや受信機などのダウンストリームに重点を置いた活動を展開している。 さらに日欧産業協力センターでは2014年より「Space.Japan」と題した活動をスタートし、日・EU宇宙政策対話の中でも求められているビジネス面に対してサポートを行っている。この活動の一環として同センターが同年に主催した「日欧宇宙フォーラム」では、欧州の宇宙関連技術や日本に向けたソリューションを紹介。200人を超える日本の宇宙産業関係者が集う盛況ぶりであった。フォーラムに引き続いて2015年に開催したのが、「宇宙セクター会議-日欧提携サポート」。こちらは東京で初となる開催だったが、EUから宇宙産業関連企業14社が参加し、日本の参加者と企業間取引(B2B)の会合を行った。2017年には「地球観測ソリューションに関する円卓会議」(東京、2月15日)が開催されたほか、GNSSに特化した訪日団が参加する「日欧GNSSウィーク」(3月7日~10日)が開催される予定となっている。 |
EUの宇宙分野における研究開発は、EUの宇宙政策が気候変動などの社会問題に対して最先端の解決策をもたらし続けることを根底で支えている。得られた研究成果はEU市民のみならず、世界中の人々の便益となる一方、そのたゆまぬ研究開発の取り組みが欧州の宇宙分野における競争力の源泉ともなっている。
EUが資金を助成している宇宙分野の研究開発は、EU加盟各国やESAの取り組みとは相補的な関係にあり、EUの研究・イノベーション助成プログラム「ホライズン2020(Horizon 2020)」を通じて実施される。ホライズン2020は2014年から2020年の7年間で、総額約11兆円に及ぶ予算をかけたEU史上最大規模のプログラムであり、あらゆる科学技術分野を対象とし、日本も含めた国際的なパートナーとの共同研究プロジェクトも募集している。
ホライズン2020の助成は、共同研究プロジェクトを対象としたものと個々の研究者を対象としたものの2つがあり、どちらも研究課題の提案募集を通して行われる。このうち共同研究プロジェクトには、EU加盟国や関連諸国の研究機関に加え、世界中のパートナー機関が参加できる。日本の研究機関が参加する場合は原則として自身のプロジェクト参加に要する予算を確保しておく必要がある。
日本の宇宙研究機関が参加している共同研究プロジェクトには、「IRENA(大気圏再突入に向けた実証機の開発)」、「THOR(未来宇宙輸送の熱保護における革新的な熱管理コンセプト)」、「HIKARI(未来航空輸送における高速基盤技術)」などがある。
ホライズン2020の現在の助成期間(2016年~2017年)においては、次の3つが宇宙研究の優先分野 となっている。
【地球観測】
公共機関向けのダウンストリームアプリケーションやサービス、コペルニクスのデータを利用したサービスの進化など |
【欧州の宇宙関連技術の競争力向上】
コペルニクスのデータを利用したサービスの進化に必要な基幹宇宙技術の開発 |
【衛星航法】
ガリレオやEGNOSを最大限に活用したダウンストリームのアプリケーション開発、およびEUのGNSSを利用したダウンストリーム産業の競争力向上 |
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