日本に精通した人材を育成~EUビジネスマン研修プログラム

PART 2

第28期参加者たちの意気込み

EUビジネスマン日本研修プログラム(EU Executive Training Programme in Japan=ETP)第28期生31名は、2012年11月にロンドン大学での研修を終え、2013年1月に来日、早稲田大学でのプログラムを開始した。エグゼクティブといっても参加者の年代、所属企業の部門はさまざま。今回が初来日という参加者もいれば、日本在住の参加者もいる。プログラムの規則には、参加者の男女比や出身国別人数などは定められていない。環境に冷静に適応し、短期集中でかなりハードなカリキュラムをこなせるかといった適性や、これまでの異文化経験値などが考慮され選出されるという。参加者の何人かに、彼らのプログラムでの目標、希望するインターン先などを聞いた。

「日本の公共機関に私たちの特殊車両を紹介したい」

アグニェシュカ・シュテシニャクさん(ポーランド出身)
所属企業 ポーランド Pojazdy Specjalistyczne Zbigniew Szczęśniak
部門 車両エンジン製造業

私の所属する会社は、消防車のエンジンや特殊用途のエンジンを製造しています。消防署や警察、軍隊などで使用される車両です。また、公共部門で使う災害復興用の特殊車両も製造しています。当社は、日本市場のこうした分野に関心を持っており、是非とも日本の公共機関に製品を紹介したいと考えています。これは私たちのビジネスプランの第1の目標です。

もうひとつは、次の段階に進んでからとなりますが、日本の企業との交流経験を生かして、先進国日本の技術や専門的知識を欧州に広めたいと思っています。

インターンシップ先としては、自動車産業にこだわってはいません。貿易またはマーケティング分野での企業をねらっています。日本企業がどのように海外とビジネスを進めているのかの知識を得て欧州に戻り、日本企業と欧州企業の懸け橋となりたいと思っています。

 

「今年は日本企業との合弁会社を立ち上げる」

ルカス・パルドンさん(フランス出身)
所属企業 英国  トライメタル
部門 庭園・レジャー製品(屋外倉庫)販売

私は野外倉庫を販売するトライメタル社で輸出部門のマネジャーをしています。日本と取引を始めて4年ですが、市場の拡大は著しいものがあります。市場の傾向や概念をさらに学んで、売り上げを伸ばし、シェアを高めたいと思っています。

現在、名古屋のグローベン社と提携関係にあり、今年は大阪のダイケン社とも合弁関係を結ぶ計画です。これによって、当社の製品をより広く販売できるようになり、また同時に彼らの製品を欧州で販売することになります。双方にとってwin-winの関係となるのです。この提携を担当するのを楽しみにしています。インターンシップは、ダイケン社の工場で製造を、東京支社で日本での販売について、学ぼうと考えています。

 

「日本人もエコで質の高いショッピングバッグを気に入ってくれるはず」

アナ・エレーラ・エルナンデスさん(スペイン出身)
所属企業 スペイン Disenos y aplicaciones del No tejido SL
部門 包装(買い物袋ほか)

私たちの会社は、高級ブランドやデパートに環境にやさしい綿や不織布、再生ペットボトルを利用して作られたショッピングバッグをデザイン、販売しています。米国ならサックス・フィフス・アベニュー、フランスならギャラリ―・ラファイエット、スーパーのカルフール、スペインのロエベやザラが主な顧客です。当社は、ポリエチレン素材などのショッピングバッグの使用を減らし、再利用を促すことで、環境保護に貢献しています。また、社員の採用や製造工程、勤務環境において基本的人権を守ることに重きを置いており、生産工場は、SA8000(社会的説明責任認証)を取得しています。我々が倫理的な企業であることは、有名ブランドにとっては重要なポイントとなります。

私の来日の目的は、卸売業者を見つけ、市場を開拓することです。8月~10月のインターンシップ先として、日本の包装の卸売業者のリーダー的企業を探していますが、そこでは当社製品を紹介してくれる販売員の研修や、市場に合ったデザインの研究開発支援をしたいと思います。私は中国やイタリアなどでも販売の経験がありますが、当社の製品は品質が高く、必ず顧客は製品を気に入ってくれます。日本でもうまくいけば、かなりの競争力を持ちうると考えています。おしゃれで環境にやさしいだけではなく、広告にもなるこのバッグをデパートやブランド企業に卸す業者を、まずは見つけなければなりません。そして、卸売業者を通じて顧客と知り合うことが大事です。そのためには、日本語をもっと勉強しないと!

 

「本社の研究開発部門と日本支社の懸け橋に」

フロリアン・ブルンシェーンさん(ドイツ出身)
所属企業 ドイツ ビー・ブラウン・エースクラップ
部門 医療技術機器 R&D

当社は、医療機器を開発し、全世界で販売しています。従業員は世界で45,000人。現在500人が働く日本支社は、2002年に現在の形となり、製品の日本の当局への登録、ロジスティクスとマーケティングを行っています。

私は、日本市場と研究開発部門の懸け橋となろうと思っています。というのも、研究開発部門はドイツ本社にしかなく、日本の市場の状況を十分に把握しているとは言えず、他方、日本支社のマーケティング部門は、本社でどのような研究開発が行われているか十分に理解していないからです。

また、世界的な規制制度と日本のそれにはギャップがあります。日本の医療機器登録は、世界で最も高度とも言え、販売できるまでに4年を要します。この点においても、ドイツと日本の間の調整役になりたいと思っています。

1年のプログラムの修了後、さらに3年日本に滞在する予定で、かなりやりがいのある4年間になると思います。安倍政権では、医療を含む社会保障制度の改革を行うと聞いていますし、交渉開始を目前に控えたEUとの自由貿易協定(FTA)では、医療技術製品も対象となるからです。

私は、日本の顧客が正しい製品選択を行えるように、支援していきたいと思っています。今、インターン先の情報収集をしているのですが、当社は幅広い製品を扱っているので、どこか当社と直接競合しない関連企業でインターンできれば、そこでの経験は、会社にとっても自分にとっても有益だろうと考えています。

 

「省エネかつ快適な住まいを提供したい」

ヨルク・ハイルさん(ドイツ出身)
所属企業 ドイツ アルプラスト社
部門 環境住宅

当社は、窓枠やドア製品を製造・販売するドイツ最大の会社のひとつです。東日本大震災と、福島の原発事故を経て、エネルギー問題に対する意識がこれまで以上に高くなっている中、私たちは、日本市場を積極的に開拓していきたいと考えています。一番の省エネは、エネルギーを使わないことです。私たちの製造する三重窓と高性能断熱材を取り入れれば、日本でも、例えば関東の冬なら、朝でも暖房なしで室内を20度に保つことができます。省エネもさながら、私は、温かい家の快適さ、快適に暮らすことの大切さを日本の皆さんに伝えたいと思います。

私は日本滞在歴が3年あり、日本についての知識はあるつもりですが、日本語がうまくないと、日本の人には関心を持ってもらえません。多くの日本企業、特に大企業は外国人にあまりオープンでないのでは、と思うこともあります。言語を使わずに図面でコミュニケーションが取れるはずの建築の分野でもそうした印象を受けたので、今後も日本で暮らし、ビジネスをしていきたいと思えば、日本語の習得は必須です。このプログラムを最大限に生かしたいと思っています。

 

ETP第28期生