2025.8.20
Q & A
欧州連合(EU)は2025年7月末、シェンゲン圏に短期滞在する非EU国籍者を対象に、新たな「出入域システム(Entry/Exit System=EES)」を10月12日から段階的に導入すると発表した。EESの導入によって国境における出入国審査がどのように変わるのかを以下解説する。
EESは、非EU国籍者がシェンゲン圏(キプロスとアイルランドを除くEU加盟国に、アイスランド、ノルウェー、スイスおよびリヒテンシュタインを加えた29カ国)を短期滞在目的で訪れる際、出入域を登録するための自動化されたITシステムです。従来のパスポートへのスタンプに代わり、顔画像や指紋などの生体認証データ、渡航文書の情報、出入域日を電子的に登録・管理します。許可された滞在期間を超過した場合や入国を拒否された場合も、その情報が記録されます。
EESは、2025年10月12日から約6カ月かけて段階的に導入され、2026年4月10日以降は、導入国の全ての国境検問所で運用が始まる予定です。段階運用期間中は、一部の国境検問所では、従来のスタンプによる手続きが行われます。

はい。「非EU国籍者」とは、EU加盟国の国籍を有しない者、またはEU加盟国ではないがシェンゲン協定の加盟国であるアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスのいずれかの国籍を有しない者を指し、日本国籍の渡航者もEESの対象になります。
日本国籍の渡航者は、シェンゲン圏にビザなしで「あらゆる180日間の期間内で最大90日間」滞在できます(特定の入域日から遡って180日間の滞在日数が通算90日を超えないということ)。EUのウェブサイトでは、短期滞在が可能な日数を確認するための計算機「Short-stay calculator」も公開されています(英語のみ)。なお、このツールは、あくまで滞在可能日数の目安を計算するもので、掲示された日数を法的に保証するものではないのでご注意ください。また、最終的に入国の可否を判断するのは、各国の入国審査当局です。
EESは以下の情報を収集・記録・保存します。
指紋の登録や顔写真の撮影を拒否した場合は、EESを導入している欧州諸国に入国できません。
EESに登録されるデータは、不正利用されないよう厳重に保護されており、アクセスできるのは各国当局の中でも許可を受けた限られた職員だけです。また、特別な場合を除き、公的機関や民間企業などの第三者に渡されることはありません。EUの専門機関である「自由・安全・公正領域の大規模ITシステム運用管理のための欧州機関(eu-LISA)」が、EESの運営・保守・セキュリティ確保を行います。

EESは、EUの対外国境管理の近代化・効率化を目的とした制度です。越境に関する信頼性の高いデータを得ることで、不法滞在者を発見し、文書や身分証の不正使用を防止します。また、国境審査を自動化することで、渡航者はよりスムーズかつ安全に移動できるようになります。
<EES導入で期待される効果>

「欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System=ETIAS)」は、米国のESTAやカナダのeTA、英国のEATと類似したシステムで、渡航前にオンラインで入国を申請する電子渡航認証です。ETIASは、EES導入から約1年後の2026年10月〜12月頃に運用開始が予定されており、EESと相互に補完し合う形で運用される見込みです。導入国は、シェンゲン協定に参加する29カ国にキプロスを加えた計30カ国です。
EESとETIASは、EUの国境管理近代化の包括的政策パッケージ「スマート・ボーダー・パッケージ(Smart Borders Package)」の中核をなしており、EUの域外国境管理の効率化と域内の安全性向上を目的としています。
最新かつ正確な情報は、EU公式ウェブサイトをご確認ください。EES(日本語)、ETIAS(英語のみ)でご覧いただけます。なお、現時点ではこれ以外に公式サイトは存在しませんので、類似サイトにご注意ください。
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