2025.5.29
FEATURE
2025年5月9日、2025年大阪・関西万博の会場で、欧州連合(EU)のナショナルデーに当たる「ヨーロッパ・デー」の公式式典およびさまざまな文化プログラムが行われた。式典にはEU加盟国の大使らが参列、文化プログラムでは、音楽やダンスのパフォーマンス、絵本のワークショップなどが行われた。また、EUや加盟国のパビリオンを巡ってスタンプを集める「EUスタンプラリー」も実施され、来場者がEUの多様な文化に触れる機会となった。
「ヨーロッパ・デー」とは、EUの中核となる構想を1950年5月9日に当時のフランス外相、ロベール・シューマンが提唱したことを記念する日であり、その75周年に当たる今年の日本における「ヨーロッパ・デー」は、EXPOナショナルデーホール「レイガーデン」で行われた公式式典で幕を開けた。式典には、マレシュ・シェフチョビチ貿易・経済安全保障担当欧州委員、ジャン=エリック・パケ駐日EU大使、EU加盟各国の大使に加え、日本政府代表として古賀友一郎経済産業副大臣が登壇。EU旗と日本国旗が掲揚され、両者の友好と連携を象徴する場面となった。
古賀副大臣は挨拶の中で、「基本的な価値観を共有する重要なパートナーである我が国とEUが連携を進める意味は非常に大きい」と強調。「展示やイベントを通じて、多くの方々がEUの取り組みへの理解を深められることを祈念する」と語った。
続いてシェフチョビチ欧州委員はEUを代表して、「本万博は知識や伝統、経験を共有し、すべての人のために新しい機会を追求することを目的としている。EUはそのような取り組みに参加できることを誇らしく思う」と述べた。さらに「EUや加盟各国のパビリオンを訪れ、欧州の豊かな文化や多様性を体験してほしい」と呼びかけた。
文化プログラムの冒頭を飾ったのは、ピアノの生演奏と人工知能(AI)による映像表現が融合した『Pianographique』。ピアニストの滑川真希氏とデニス・ラッセル・デイヴィス氏の演奏に呼応し、デジタル・メディアアーティストのコリ・オラン氏が音のデータをもとに映像をリアルタイム生成。音楽の解釈に応じて毎回異なる映像が即興で展開され、音が映像を「奏でる」ような視覚と聴覚が融合した体験を生み出すのが特徴だ。この日は、「EUの歌」であるベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」や、作曲家・久石譲氏の新曲が演奏され、日本と欧州、テクノロジーと音楽が見事に共鳴し合った。
続いて披露された『Breath』は、「呼吸」という視点から人間と環境の関係に迫る、舞台演出家グロリア・ベネディクト氏によるマルチメディア・ダンス作品。動き・科学・物語を融合し、古代から現代までの呼吸の理解をたどりながら、3人の若手ダンサーが再生可能な未来に必要な協力のかたちを身体で表現した。パフォーマンス後には、「ヨーロッパ・デー」の文化プログラムを統括した、EU対外行動庁の国際文化関係・パブリック・ディプロマシー調整官ガイア・ダネーゼ氏とベネディクト氏が対談。『Breath』制作の裏話や作品に込めた思い、さらに芸術が未来に与えうる影響などについて語り合った。
EUおよびEU加盟各国のパビリオンを巡ってスタンプを集める「スタンプラリー」も終日開催された。スタンプを3つ以上集めた参加者には記念品が贈られる仕掛けもあり、子どもから大人まで多くの人が「パスポート」を片手に欧州を旅するような感覚でパビリオン巡りを楽しんだ。
午後には、EU加盟27カ国から選ばれた若手演奏家による「EUユース管弦楽団」の吹奏五重奏団がEU加盟国のパビリオンを巡りながら軽快な演奏を披露し、夕方には「レイガーデン」のステージにも姿を現した。ホルン、トランペット2本、ユーフォニアム、トロンボーンによる編成で、あいにくの雨模様となった会場に明るさをもたらした。「音楽で観客をパーティーに導く、『ハーメルンの笛吹き男』のような演出をイメージした」(ダネーゼ氏)という。
夜の「レイガーデン」を彩ったのは、日欧の音楽と映像が融合するナイトプログラム『BACK2BACK』。フランス人電子音楽アーティストのクリコー・クーシアン氏と日本人DJのMAYUDEPTH氏が交互にライブ演奏を披露し、ジャクソン・カキ氏と山地真介氏による映像演出が空間を一変させた。観客も自然と体を揺らし始め、パケEU大使もダンスの輪の中に入るなど、国境もジャンルも越えた一体感に包まれた一夜となった。
そして、この日を締めくくるように、EUおよび一部の加盟国のパビリオンがEU旗の青と黄色にライトアップされ、平和と結束の象徴として輝いた。
「ヨーロッパ・デー」に先立ち、文化プログラムを統括したダネーゼ氏はこう語っていた。「芸術には、政治や科学が届かない心に働きかける力がある。平和、共創、多様性を体現する場として、アートとテクノロジーが融合する一日にしたい」。さらに、「欧州も日本も高齢化が進む中、世代を超えた対話と若者に希望を託す文化の力がますます重要になっている」とも指摘、文化の力が未来を形づくる原動力となることを強調した。
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