2025.6.11
EU-JAPAN
2025年5月9日、大阪・関西万博会場で開催された欧州連合(EU)の「ヨーロッパ・デー」では、欧州各地に伝わる物語の魅力を紹介する文化イベントも行われた。会場となった「いのちの遊び場 クラゲ館」には家族連れをはじめ多くの人々が訪れ、EUがこの日のために制作した絵本『ヨーロッパのおとぎ話』が無料配布されたほか、EU加盟国のフィンランド、スウェーデン、チェコ、アイルランド、リトアニアによる読み聞かせやワークショップが行われ、来場者との交流が深められた。
※レポート①はこちらをご覧ください。
同イベントは、欧州の豊かな物語世界を広く紹介し、子どもたちやその家族が異文化に触れる機会を創出することが狙い。会場には、EUの万博マスコット「エウロパ」をはじめ、各加盟国のマスコットも登場し、子どもたちと握手や記念撮影をしたり、絵本を手渡したりと、終始にぎやかで温かな雰囲気に包まれた。
トップバッターを務めたのはフィンランド。フィンランド大使館の職員が登壇し、同国出身の作家トーベ・ヤンソンによる児童文学の名作、『ムーミン谷の仲間たち』の一編「目に見えない子」を紹介した。この物語に登場するのは、感情を押し殺して声を失い、姿まで見えなくなってしまった少女ニンニ。大使館職員は、「この物語は、自分の感情を表現すること、そして他者の存在を丁寧に受け止めることの大切さを教えてくれる」と語った。2025年はムーミンシリーズの出版80周年という節目の年でもあり、「キャラクターの可愛らしさだけでなく、物語に込められた作者の深いメッセージにも注目してほしい」と来場者に呼び掛けた。

スウェーデンは、同国を代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの作品『長くつ下のピッピ』を題材に、日本の伝統芸能である浪曲との異色のコラボレーションに挑戦した。物語の一節を、浪曲師が三味線の演奏にあわせて浪曲調に朗読するという、「日瑞(にちずい)文化融合」の試み。朗読を担当した浪曲師は、「私自身も初めての試みで緊張したが、とても貴重な経験になった。いつかまた、世界のどこかでこの朗読を披露できたら」と語り、会場からは大きな拍手が送られた。

チェコは、画家で作家のヨゼフ・チャペックによる児童書『こいぬとこねこのおかしな話』を紹介した。「チェコの人なら誰でも知っている」とされる国民的な絵本であり、朗読ではチェコ語の原文も織り交ぜながら物語が語られた。登壇したチェコセンター東京の職員は、「チェコではモグラやキツネといった動物がヒーローとして親しまれている。これは自然との共生を大切にする国民性が反映されたもの」と説明。最後は、チェコ語で「こんにちは」や「さようなら」の意味を持つあいさつ「アホイ!」のかけ声で締めくくられた。

アイルランドは、明治の文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)ゆかりの地として、日本との文化的なつながりを紹介した。富山大学の「ヘルン文庫」と連携し、地元団体「富山八雲会」が、ハーンの怪談『むじな』を紙芝居形式で上演。三味線の生演奏にあわせ、日本語と英語で交互に語られる朗読が、欧州と日本の文化の懸け橋を印象づけた。

最後を飾ったリトアニアからは、飛び出す絵本作家として国際的に活躍するエレナ・セレナ氏が登場し、親子で楽しめるポップアップカード作りのワークショップを開催した。日本でも作品が出版されているセレナ氏は、「立体的な絵本は、家族の団らんにぴったりのツール。ぜひ日常の中で楽しんでほしい」と笑顔で語った。3歳の子どもと参加した保護者は、「これまで立体的なものはあまり作ったことがなかったが、親子で楽しく取り組めた」と喜んだ。

物語を軸にした各国のプログラムは、来場者にEU加盟国それぞれの価値や文化の背景を自然なかたちで紹介する機会となった。童話や絵本という親しみやすい入り口を通じて、日本と欧州をつなぐ新たな文化交流の可能性を感じさせる一日となった。
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