欧州文化首都2014 ウメオ(スウェーデン)

© Jonatan Stalhos, Umea, 2014

3月のこのコーナーで紹介したラトビアのリーガに続き、今回は2014年のもうひとつの欧州文化首都(European Capitals of Culture)、スウェーデンのウメオを紹介する。「欧州の統合には、政治・経済だけではなく、文化的な結びつきも必要」との欧州文化首都の目的に沿い、ウメオでも本年いっぱい、さまざまな文化交流行事が行われる。

持続可能な成長と発展を、北極圏に近い町から発信

ウメオ市は、首都ストックホルムの北600kmのスウェーデン北東部に位置する。欧州文化首都としてアピールしていくのは「人類が持続的に成長・発展する推進力と文化」。欧州文化首都という取り組みが始まった1985年以来の最北の文化首都として、世界と積極的に繋がりを持ち、このテーマの重要性を示していく。北極圏まで北に400kmのウメオは、地球温暖化が進み、北極を中心に覆っている氷が溶ければ、その影響を身近に感じる位置にある。だからこそ、ウメオが地球温暖化に対してどのように反応し行動するかは、人類全体にとって、たいへん大きな意味を持つ。

ウメオ市は北極圏に近い、ウメ川に沿った大学都市。真夏はほぼ白夜 Photo: Shih-Yen Lo, Umea 2014

ウメオは、2014年欧州文化首都の使命を「STAY COOL」(涼しさを保つ/平静を保つ/カッコ良さを保つ)と定義し、世界中の人々の知恵とウメオの力を合わせ、ウメオのような北方の都市にとって非常に重要な課題と向き合っていきたいと考えている。文化イベントを通して、人々が思考を変え、より持続可能な生活を送れるような道筋を示したいのだ。また、文化首都行事では、古くからこの土地に住むサーミ人の伝統文化にも注目していく。欧州の多様性を示すとともに、自然と共に生きるサーミ人の歴史や考え方からは、学ぶべきことは多いだろう。

サーミ人とトナカイの土地だったウメオ

ウメオが初めて歴史上の文献に登場するのは14世紀。それまで、ウメオは先住民族であるサーミ人が住んでいる土地だった。1622年にはスウェーデン王、グスタフ・アドルフによって、市に制定されているが、1638年の時点では、家が40戸しかなかったと言われている。現在、ウメオ市の人口は7万5,000人。そのうちウメオ大学の学生が3万7,000人、大学のスタッフが4,200人。市民の半数以上が大学の関係者ということになる。ウメオが「大学都市」と言われるゆえんだ。

[写真左] ウメオ大学。ウメオ市の人口の半数以上を学生と大学のスタッフが占める Photo: Johan Gunséus, Umea 2014 [写真右] 何度も起きた大火災から得た教訓を生かし、延焼を防ぐために植えられた樺の並木。この並木により、ウメオは「樺の市」と呼ばれている Photo: Per Lundberg, Umea 2014

 

ウメオで観光客に一番人気のスポットは、ウメダーレン彫刻公園。ここは、スウェーデンで2番目に大きいアートギャラリーである。世界中の著名な彫刻家の作品のコレクションを所蔵し、公園内に35点の彫刻作品を展示、2年に一度、展示作品を入れ替える。元々精神科の病院だったこの場所には、歴史的建造物として病院の建物も残されている。

サーミ人の生活を再現したヴェステルボッテン県立博物館の展示 Photo: Malin Grönborg, Umea 2014

ヴェステルボッテン県立博物館では、遊牧でトナカイを育てていたサーミ人の暮らしが展示されている。現代のサーミ人の暮らしも紹介しているが、サーミ人の4分の1は、今でも昔と同じようにトナカイを育てながら生活している。

サーミ研究センターは、大学の機関のひとつで2000年に創設された。ここはサーミ文化を守り研究する活動の中心となる機関だ。サーミ文化について他の大学と共同研究を行ったり、研究・調査の環境を整えることを目的としている。

 

雪と氷、炎と光、音楽、サーミ文化が彩る多彩なイベント

2014年欧州文化首都ウメオは1月31日(金)~2月2日(日)までの「オープニング・ウィークエンド」から始まった。この期間中に行われたイベントから「バーニングスノー(Burning Snow)」を紹介しよう。

[写真左] 開会式のスピーチでは、サーミ文化についても語られた。サーミ文化は今年の欧州文化首都の重要なテーマでもある Photo: Håkan Larsson, Umea 2014 [写真右] 雪の中、光や音楽、ダンスによって行われた「バーニングスノー」 Photo: Håkan Larsson, Umea 2014

 

バーニングスノーは、雪の積もる中で行われた光、音楽、歌、そしてダンスによる盛大なフェスティバル。ハイテクを用いた未来的デザインと伝統文化、そして自然が出会うイベントとなった。このバーニングスノーと共に欧州文化首都開会式が行われ、ヨーロッパ各地からのゲストとウメオの住民が、文化首都行事の始まりを祝った。およそ5万5,000人の観衆が見守る中、スウェーデンのヴィクトリア王女は「文化は、過去と現在、そして未来の社会を一つに織り上げた、織物のようです」と開会の挨拶を述べた。

今も引き継がれているサーミ人の伝統工芸品が展示され、サーミ人の歴史や文化も伝えた Photo: Jon Mihkkal Inga, Umea 2014(左) Photo: Fia Kaddik, Umea 2014(右)

サーミ人の文化に関するイベントは年間を通して行われる。サーミ人の文化の研究・紹介は、環境問題に重点を置く今年の欧州文化首都ウメオにとり、最も重要なテーマのひとつだ。3月に行われた「メイド・イン・サーミ展」では、サーミ人の伝統工芸品が展示された。手工芸の伝統は現代にも引き継がれており、展示されたのは、今を生きるサーミ人の作品だ。この展示会では、サーミ人の歴史や文化も紹介された。

「ロックアート・イン・サーミ」では岩を使った石器時代のアートの再現のほか、サーミ人の文化をテーマにしたパフォーマンスも行われる Photo: Hans-Olof Utsi, Umea 2014

また、12月まで「ロックアート・イン・サーミ」というイベントが続く。岩のアート、つまり、何千年も前、石器時代の人たちの、岩を使った表現を再現するイベントだ。岩を掘ったり、ロックペインティングをしたり、さまざまな石器時代の道具に触れたりできる。このイベントでは、石器時代の人々の思いや考え方までもが、わかることだろう。

欧州文化首都ウメオのイベントは、サーミ文化の紹介以外にも、次々と開催されている。そのジャンルは、音楽、映画、演劇、歌劇、美術・工芸作品展示、講演、ワークショップ、スポーツなど、幅広い。2月19日~23日には、毎年開催のウメ・フォークフェスティバルと合同で、「フォーク・アンド・ワールドミュージック・ガラ」、世界のフォークソング・民族音楽の祭典が開催された。メインホールのコンサートでは9組のミュージシャンが演奏。その他に40ものセミナーとワークショップ、そして、たくさんのミニコンサートが行われた。このイベントは、スウェーデンの民族音楽をヨーロッパ中の人に知ってもらうよい機会となった。 

日本関連の行事も豊富

ここ数年、多くのスウェーデン人が、日本に対して関心を持ち始めている。ウメオからも、ゲーム音楽や建築を学ぶため、日本に留学する若い人々が出てきている。ことに東京は、ウメオとは異なり、さまざまなものが雑然と混在する町だ。東京の文化がウメオの人々にインスピレーションを与え、日本とウメオは、よい関係を築くことができるだろう。ウメオで開催の日本関連イベントには、以下のようなものがある。

  1. 雑誌の特別版刊行: スウェーデンの雑誌『FORM』の特別版が日本とスウェーデンをテーマにし、東京とウメオの両方で発売される。(刊行時期は未定)
  2. 日本発のプレゼンテーションイベント: 面白いアイディアを数分で紹介するプレゼンテーションイベント「Pecha Kucha(ペチャクチャ)」が行われる。これは日本でも活躍する建築家、クレイン・ダイサムが始めたもの。2月7日、国内外のクリエイターとともに行われたほか、今年中に計4回、異なるテーマで行われる予定だ。
  3. 日本庭園: 苔を使った日本庭園が、ウメオ市とデザインプロデューサー黒崎輝雄とのコラボレーションにより、石川県の小松市の協力を得てウメオ市内に作られる。詩的な日本庭園に適する場所を市内で選定する。
  4. 日本の生地と絞り染め技術の展示会:ウメオでは初めての展示となる。
  5. 日本映画無料鑑賞デー: 2月22日、日本大使館の協力の下、3本の日本映画が上映された。上映作品は、「ウォーターボーイズ」(2001年)、「ほしのこえ ~The voices of a distant star~」(2002年)、「南極料理人」(2009年)。
  6. 「北斎からマンガまで」: 世界中の古いアートと新しいアートを学ぶウメオ在住の5人の女性が、4月中旬、東京と京都を訪れ、幅広く、日本のさまざまな美術に触れた。そして、ウメオでその体験を、年内数回にわたり、写真、ワークショップ、トークイベントなどでシェアしていく。

 

駐日スウェーデン大使からのメッセージ
ウメオという美しい町がラトビアのリーガと共に2014年の欧州文化首都に選出されたことを、スウェーデンは大変光栄に思っております。スウェーデン北部に位置するウメオは文化的伝統を色濃く受け継ぎ、自然体験活動や文化的活動が非常に盛んな、学生の町です。今年一年を通じ、ウメオでは音楽、演劇、オペラ、文学、映画、アート、工芸、そしてスポーツなど、数百ものイベントが行われるでしょう。重要な目標は、この町の豊かな文化的遺産を見出し、広く紹介することです。

ウメオは今年、EUにおける唯一の先住民族であるサーミ人の文化や歴史に重点的に取り組む予定です。サーミ人は文化、言語、宗教、そして暦に至るまで、彼ら独自のものを持っています。今年、ウメオではたくさんのサーミ関係のイベントが予定されていますが、その中で特に、8つの季節を持つサーミ人の暦に注目し、紹介していこうとしています。ここでしか見ることのできない彼らのユニークな文化をたくさんの人に知っていただこうと思っています。

今年、ウメオが注目されることにより、ウメオだけでなく、スウェーデンの豊かな文化すべてに対する理解が深まることを期待しております。

駐日スウェーデン大使
ラーシュ・ヴァリエ
Lars Vargö

関連情報

 

ウメオ2014公式サイト(英語)
http://umea2014.se/en/

Visit Sweden(スウェーデン公式旅行・観光情報ウェブサイト)
http://www.visitsweden.com/sweden/

欧州文化首都について
欧州委員会(英語)
http://ec.europa.eu/culture/tools/actions/capitals-culture_en.htm

EU・ジャパンフェスト日本委員会
http://eu-japanfest.org/n-committee/aboutus.html

EU MAG関連記事
欧州文化首都2014 リーガ(ラトビア)
http://eumag.jp/spotlight/e0314/