欧州の個性光るファッションブランド上陸!

欧州の中小ファッションブランドの日本進出を支援する

2013年3月、欧州の35ブランドが東京に集結、日本人モデルが各ブランド最新の2013年秋冬コレクションから一押しの数着を身にまとい、キャットウォークで披露した。これは、欧州連合(EU)のGateway Programme(囲み記事参照)が対象とする産業分野のひとつ、ファッション分野の訪日プログラム「weareurope」にて行われたイベントだ。日本で知名度の低い中小ブランドを中心に、欧州の多彩なファッション企業が日本市場に参入するのを支援するこのweareuropeは今回で9回目。2日間で業界関係者約500人が来場し、デザイナーやビジネス担当者と交流した。こうしたブランドの紹介を通して、EUは、欧州の多様な創造性を日本で知ってもらうことを期待している。(出展全ブランドについては、http://www.weareurope.com/をご覧ください。)

参加には厳しい条件が課される。まず、ブランドを代表するデザイナーを擁し、EU域外への輸出経験があり、加えて日本の取引先の要望に応えられる品質やビジネススキルを持っていることが求められる。日本に初上陸の企業もあれば、すでにデパートやセレクトショップで日本市場に進出はしているが、さらなる事業拡充をねらう企業もある。このプログラムは、こうした企業に事前研修や、コンタクト作りの機会を提供する。

欧州委員会本部で8年前にweareuropeを立ち上げたエリック・ハーメリンク現・駐日EU代表部広報部書記官は、このプログラムの背景をこう説明する。「ヨーロッパのメガブランドは日本では大成功を収めていますが、ほかにもクリエイティブなブランドがたくさんあります。私たちはそういった中小ブランドにとって日本市場にはニッチな可能性がある、とふんだのです。参加ブランドは、来日直前がパリ・コレクションで忙しかったとしても、日本で認知されようと熱心に準備を重ね、来日しています」

各ブランドは独自の事業展開も

エドムンド・マクナルティの2013年秋冬メンズコレクションは、日本のデパートにも並ぶ予定だ。

ニットの伝統を受け継ぎ、モダンなデザインを提案するアイルランドのブランドEdmund McNulty Knitwear(エドムンド・マクナルティ・ニットウェア)を自ら展開するデザイナーのエドムンド・マクナルティさんは、取引先と信頼関係を築くには時間がかかるものだ、と話す。「バイヤー、代理店、卸業者など、関係者に直接会うことができ、さらに新しいコンタクト先も作れるため、このプログラムは大変貴重です。今回、アイルランドから新作を持ってきたので、日本の顧客にとても喜ばれました」と話した。

次世代まで受け継げるほどの上質なイタリア製の素材を使い、かわいらしいグラフィックデザインをインドで手作業で刺繍するなど、パシュベックでは量産はせず品質に徹底的にこだわる。

ドイツ・ミュンヘンのブランドPaschbeck Fummel+Kram(パシュベック・フッメル+クラーム)からもデザイナーのアンジェリカ・パシュベックさんが来日した。彼女のブランドは今、香港で人気が高いという。「日本の取引先とはパリやミラノで知り合ったのですが、パリ・コレ期間中は特に、誰もが忙しくてゆっくり話せなかったのです。今回来日して、彼らと一緒に食事をしながら改めて打合せができるので、よかったと思っています」とコメントした。

北欧発マックスジェニーでは、防寒ジャケットなど一部の製品に、ペットボトルを再生して作った生地を使っている。

鮮やかな色使いのデザインで力強い印象を残すデンマークのブランド、Maxjenny(マックスジェニー)からは、広報のナディア・マリア・レイヴン・ニールセンさんが、自社ブランドの服を着て宣伝に務めていた。「日本に来たのは今回が初めてです。デザイナーと私の2人だけの会社ですので、オランダやドイツなど各国に代理店があります。日本でも代理店を見つけたいと思っています」と話す。

多くの参加ブランドにとっての課題とは、日本で事業を展開するにあたって販売店との仲介役となる代理店や卸業者を見つけること。信頼できる業者と関係を築き、事業をどのように展開していくか、weareuropeをステップとして今後、ブランド独自に開拓していく。

1994年以来、3,000社を超える欧州企業が来日
EU Gateway Programmeでは、中小企業を対象に、日本市場への参入を支援する機会を提供している。1994年に開始して以来、基準や制度の違いから日本市場への参入が難しいとされてきた産業分野の欧州企業が、これまでにのべ3,000社以上参加している。2008年~2014年のプログラム実施期間には、「ファッションデザイン」分野のほか、「環境・エネルギー関連技術」、「情報通信技術」、「医療ヘルスケア製品・技術」、「建築資材・建設技術」、「インテリアデザイン」の6分野でプログラムが実施されてきた。

駐日EU代表部の担当者は、「このプログラムは、貿易促進キャンペーンというよりは、欧州企業のための実地研修と言うことができます。中小企業にとって、遠い日本市場に参入するのはリスクを伴いますので、支援が必要です」と説明する。

欧州委員会は参加企業の選考後、ブリュッセルで事前研修を実施している。この研修で、参加企業は、日本のビジネス慣習を学び、欧州企業の日本での事業経験者から直接話を聞く。来日すると、来場者に製品を紹介する展示商談会のほか、日本市場についてのオリエンテーション、日本の関連企業や施設の視察などを行う。プログラムが終了してから2年間にわたりプログラム参加後の成果に関する調査を行っているが、回答した企業の8割以上から、有用な投資や売上増につながったなど、プログラムに満足する報告が出されている。