2012.9.7

Q & A

欧州市民イニシアチブとは?

欧州市民イニシアチブとは?

Q1. 欧州市民イニシアチブとは何ですか?

欧州市民イニシアチブ(European Citizens’ Initiative=ECI)とは、EUが権限を持つ政策分野について、加盟国7カ国から計100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案することができる制度です。これはEU市民に新たに付与された権利で、2009年12月に発効したEU基本条約「リスボン条約」で導入されました。本制度は、ECI規則が制定され、加盟各国が関連国内法を整備した後の、2012年4月1日にスタートしました。

Q2. ECIはなぜ導入されたのですか?

EUの政策決定の仕組みでは、EU市民の声は欧州議会を通して反映されることになっています。ECIは、それに加えて人々がEUをより身近なものに感じ、その民主的基盤をより強固なものとするため、市民が直接政策決定過程に参加できる制度として創設されました。EUのような超国家的機関がこうした参加型民主主義の制度を取り入れた例はありません。イニシアチブと言うと、日本では地方首長のリコールや請願などを連想しますが、ECIは単なる請願や陳情ではありません。市民の側からの政策提言である点に特徴があります。

Q3. イニシアチブの具体的な手順は?

イニシアチブは、まず、7つ以上の異なる加盟国に居住するEU加盟国の国籍を持つ市民7人以上が市民委員会を設立することから始まります。委員は欧州議会選挙の選挙権を有するEU市民でなければなりません(※1)。なお、欧州議会議員は市民委員会の委員にはなれますが、最低必要人数7人の1人としては数えられません。市民委員会は、ECIの手続き全般を通じて委員会を代表し、対外的に行動する代表と副代表を1人ずつ指名します。なお、個人以外の組織や団体はイニシアチブの提案を奨励、支援することはできますが、市民委員会を立ち上げることはできません。プロセスは表1のとおりです。

表1 ECIのプロセス

作業(主体) 内容 期間
市民委員会 市民委員会が設立され、その代表と副代表を指名する
登録の要請 市民委員会が欧州委員会にイニシアチブの登録を要請する
2カ月以内
登録 欧州委員会がイニシアチブの登録を受諾し、提案内容を公表する
12カ月以内
支持(署名)集め 市民委員会がEU市民100万人以上の支持表明を紙またはオンラインで集める[*]
表明の認定 集められた支持表明について、市民委員会が加盟国それぞれの所管官庁に検証を依頼する
3カ月以内
表明の認定 それぞれの所管官庁が有効な支持表明(署名者)数を認定する
提出 市民委員会が欧州委員会にイニシアチブを提出する
3カ月以内
検証、公表 欧州委員会が市民委員会の代表と面会、欧州議会において公聴会を催す。欧州委員会がイニシアチブを検証し、法的・政策的な行為を行う場合はその内容を公表、行わない場合はその理由を通知し公表する

*市民委員会は事前に、電子的に支持表明を集めるためのオンラインシステムの検証を、そのデータが保存される国の所管官庁に依頼し、1カ月以内にその認定を受けなければなりません。

Q4. ECIが登録されるための要件は?

イニシアチブの求める案件が、環境・農業・運輸・公衆衛生など欧州委員会が法案を作成する権限を有している政策分野に関するものであることが最も重要です。EUの基本条約の枠組みの中で、それを施行するためにEUの法的行為が必要だと判断された案件だけが受理され登録されます。ECIでEU条約自体の改定を求めることはできません。

市民委員会は欧州委員会の指定されたウェブサイトに、23あるEU公用語のひとつで以下の情報を提供し、イニシアチブの登録を申請します。

  • イニシアチブのタイトル
  • 主題
  • 提案趣旨
  • 提案に関連するEU基本条約の条文
  • 市民委員会の委員7名の氏名、住所、国籍、生年月日、および代表と副代表の氏名とメールアドレス
  • 活動資金および支援金すべての出処(出資者1人あたり年500ユーロ以上の場合)
  • 想定される法律の案文を含む付属資料、詳細情報など(任意)

欧州委員会はこれらの情報に基づいて、当該イニシアチブが以下の条件に合致しているかどうかをチェックし、問題がなければ正式に登録します。

  • 市民委員会の構成が要件を満たしており、代表・副代表が指定されている
  • 案件が欧州委員会の権限の範囲内にある
  • ECIの制度を悪用、乱用していない、無規律ではない
  • 提案の内容がEUの基本的価値に反していない

Q5. 支持表明の署名はどのように集めるのですか?

イニシアチブが登録された日から1年間が支持表明の署名を集める期間です。署名には所定の書式を用い、紙かオンラインで集めます。イニシアチブの成立のためには「EU全体の利益を代表する」という観点から、EU加盟国27カ国中、少なくとも7カ国から、それぞれ最低必要人数の署名を集めなければなりません。つまり、計100万人の署名と、最低必要人数を満たした国の数が7つ以上という2点がイニシアチブ成立の条件となります。欧州議会選挙の選挙権を有するEU加盟国国籍の市民は誰でも、支持表明に署名できます。加盟国ごとの必要署名人数は表2のとおりです。

表2 加盟各国のECI最低必要人数

国名 最低必要人数 人口(百万人)
ドイツ 74,250 81.84
フランス 55,500 65.40
イギリス 54,750 62.99
イタリア 54,750 60.85
スペイン 40,500 46.20
ポーランド 38,250 38.21
ルーマニア 24,750 21.36
オランダ 19,500 16.73
ギリシャ 16,500 11.29
ベルギー 16,500 11.04
ポルトガル 16,500 10.54
チェコ 16,500 10.50
ハンガリー 16,500 9.96
スウェーデン 15,000 9.48
オーストリア 14,250 8.44
ブルガリア 13,500 7.33
デンマーク 9,750 5.58
フィンランド 9,750 5.40
スロヴァキア 9,750 5.40
アイルランド 9,000 4.50
リトアニア 9,000 3.20
ラトビア 6,750 2.04
スロヴェニア 6,000 2.06
エストニア 4,500 1.34
キプロス 4,500 0.86
ルクセンブルク 4,500 0.52
マルタ 4,500 0.42
合計 565,500 503.48

Q6. これまでに登録されたイニシアチブは?

この制度に基づいて最初に登録されたのは「友愛2020:移動、進歩、欧州」というタイトルのイニシアチブです(※2)。イタリア、オーストリア、スペイン、ハンガリー、ベルギー、ルーマニア、ルクセンブルクの7カ国に住む市民が立ち上げ、本年5月9日に登録されました。市民の連帯を基本に欧州の統合を図るため、エラスムス計画、欧州ボランティアサービスなどの交流プログラムを拡充し、文化間交流のスキルを向上させることを求めています。2012年8月末現在、10のイニシアチブが登録されており、署名活動中です(http://ec.europa.eu/citizens-initiative/public/initiatives/ongoing)。なお、2010年12月にグリーンピースが欧州委員会に遺伝子組み換え作物の承認を中止するよう求め、100万人以上の署名を集めて請願書を提出していますが、この請願はECIとは見なされません。ECIの対象となるのは2012年4月1日以降の申請のみです。

Q7. 署名を集めた後は?

1年間で条件に合わせて100万人以上の支持表明の署名を集めた後、署名者の属する各加盟国の所管官庁に署名の有効性と数を認定してもらいます。所管官庁は3カ月以内に回答しなければなりません。認定を受けた後、イニシアチブは欧州委員会に提出されます。欧州委員会はイニシアチブを検証し、法的・政策的な行為を行うかどうかを3カ月以内に決定します。欧州委員会がイニシアチブに応えて法案を提出すると決定した場合、欧州議会とEU理事会は通常手続きで法案を審議します。なお、署名集めに伴って入手された個人データはコピーも含めイニシアチブ提出後1カ月以内に破棄されます。また、必要数の署名が集められなかった場合は、イニシアチブ登録日から18カ月以内に破棄する規定になっています。

【更新情報】2014年7月1日にクロアチアが加盟したことにより、各加盟国のECI必要最低人数が改訂されました。詳しくはこちらのガイドブックのP.21をご覧ください。

(※1)^ オーストリアは16歳以上、他の加盟国は18歳以上の市民が欧州議会の選挙権を有する。

(※2)^ イニシアチブのタイトル:Fraternité 2020 – Mobility. Progress. Europe

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