EU域内のローミング料金撤廃とは?

2017/06/13

この記事をプリントする

2017年6月15日から、欧州連合(EU)域内のローミング料金が撤廃される。EU域内であれば、どの国に行ってもローミング料金を課されることなく、自国と同様の料金で通話やSMS、データ通信ができる。そのメリットや注意点、観光や出張でEUを訪れる際の適用条件などを解説する。

Q1. 欧州連合(EU)域内のローミング料金撤廃について、概要と経緯を教えてください。

ローミングとは、自国※1で契約しているモバイル機器(スマートフォン〔以下、スマホ〕、スマホ以外の携帯電話、タブレット型端末、ポータブル・コンピューター、ルーターなど)を使って、自国外で、通話や、ショートメッセージサービス(以下、SMS)によるテキストの送受信、インターネットを使ったデータ通信などのサービスを利用することです。こういったサービスは、現地(滞在国)の通信事業者の通信回線を使用するため、現地事業者はその分の利用料を、利用者が契約している通信事業者に請求します。請求された料金は、最終的に利用者に課されます。それがローミング料金です。

通信サービスの分野でも国境がなくなることは、1995年の国境検問撤廃や2002年のユーロ通貨導入と並び、欧州統合のメリットを実感できる画期的なステップとなる © European Union, 1995-2017

国境を越えた人・物・財・サービスの自由な行き来を進めてきたEUは、現在、「デジタル単一市場(Digital Single Market=DSM)」の構築に取り組んでいます。しかし、通信サービスの分野では、依然としてEU加盟各国の間でローミング料金が存在しており、DSMを推し進めていく上で、課題の一つとなっていました。ローミングの仕組みを知らないばかりに、渡航先に持ち込んだモバイル機器を長時間もしくは大容量使って、後で高額なローミング料金を請求されてしまうケースも発生。このような状況に対して、欧州委員会では、まず2007年にローミング料金の上限を設定。以来、下の表のように、10年かけてローミング料金を90%以上削減しました。2015年には、欧州議会とEU理事会がローミング料金の完全撤廃に合意し、本年6月15日から新ルール「Roam like at Home」が施行されることになりました。

EUにおけるローミング料金の変遷

出典 “End of roaming charges for all travellers in the EU” – European Commission

Q2. 「Roam like at Home」の内容を教えてください。

新ルールでは、EU域内であれば、自国で契約した通信サービスを移動先の国でもローミング料金が課されることなく、まさに自国にいるのと同様に使うことができます。例えば、A国の通信事業者と契約した通信サービス(通話やSMS、データ通信など)は、通勤・通学や観光、あるいは引退後に2カ国間で過ごすなどの理由から、B国で使用してもローミング料金は発生しません。もしA国の事業者との契約が「無制限で使用できる」というものであれば、EU域内の各国でも、もちろんその条件が適用されます。

© European Union, 2017

この新ルールは、EU加盟28カ国で一斉に適用され、今後は欧州経済領域(European Economic Area= EEA)のアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーでも順次適用されることになっています。

Q3. 確かにEU域内でローミング料金なしに通信サービスを使用できるのは便利です。このルールが悪用・乱用されることはないのでしょうか?

新ルールは、主に「定期的にEU域内の他国を訪れる人」を想定して作られたものですが、例えばA国に居住しているにもかかわらず、より料金の安いB国の事業者と契約してA国での使用を続けたり、料金の安い国でデータ通信の無制限プランを契約し、それを他者に売却して利益を上げたりするなどの悪用・乱用が考えられます。新ルールでは、そのような場合にはローミング料金を課すことができると規定し、その金額も設定しています。

利用者がルールを守っているかどうかは、契約事業者が直近4カ月またはそれ以上の期間内の利用歴でチェックすることができます。ルールの諸条件を踏まえて、自国により長く滞在し、より多くのサービスを使用する限り、EU域内の国々を転々としたり、ある程度の期間、自国外に滞在したり、一日に何度も2カ国間で使用したりしても悪用・乱用が疑われることはありません。今日のEUでは、生活圏が複数国にまたがる人も少なくありません。そのようなケースでは、一日に最低1回でも、契約する事業者が所在する国での回線接続歴(Log on)があれば問題なく使用することができます。

新ルールは、利用者の「公正な利用(fair use)」を前提とする一方、悪用・乱用から事業者を守るセーフガードも設けている © European Union, 1995-2017

自国外での滞在期間が長く、同時にローミングの量が多いことが発覚した場合には、事業者は利用者に対して規定のローミング料金を課す可能性があることを通告します。利用者が通告を受け取ってから2週間以内に自国へ戻り、自国での利用が確認できれば、ローミング料金は発生しません。それ以上経っても利用状況が変わらない場合には、通告の日までさかのぼってローミング料金が課される場合があります。いずれにせよ、事業者から何も通告がなければ、そのまま自国での契約内容が自国外でも適用され続けるというわけです。

なお、全く他国に行かない人に対しては、新ルールは何の影響も及ばず、これまで同様の料金や上限の契約内容が継続されます。

Q4. 日本からEU域内の国々を訪れる際、レンタルしたモバイル機器や、事前に購入・現地調達したプリペイドSIMカードでも、「Roam like at Home」は適用されますか?

レンタルしたスマホなどのモバイル機器が、EU加盟国内にある通信事業者が発行したSIMカードを用いている限り、新ルールは同じように適用されます。

EU域内で使用できるSIMカードは、プリペイド(先払い)、もしくはポストペイド(後払い)がありますが、ポストペイドは目的国での居住証明がないと契約できないのが通常です。短期間の旅行や出張などでEUを訪れる際、日本でスマホやルーターをレンタルして渡航するケースも多いです。それらのモバイル機器には、EU加盟国の事業者が発行しているSIMカードがあらかじめ入っているので、EU域内に入れば自動的に新ルールが適用されます。

SIMフリーのスマホを持っている人であれば、事前にEU加盟国の事業者が発行しているプリペイドSIMカードをオンラインで購入するか、あるいは目的国に着いてからプリペイドSIMカードを購入することで、新ルールが適用されます。これらのSIMカードを入手する際の購入条件は、EU加盟各国で異なります。

Q5. スマホやタブレット型端末で動画やゲーム、アプリなどを利用するケースも多いですが、データ通信についてもローミング料金は一切かからないのでしょうか?

データ通信については悪用・乱用のリスクが高いなどの理由から、事業者は上限付きで少額のローミング料金を課すことができる © European Union, 2017 – EP

自国の通信事業者との契約において、通話・SMSについて「無制限」で利用できるというものであれば、今回の新ルールでは、国外でも同じように無制限となり、ローミング料金もかかりません。しかし、インターネットのデータ通信について、「無制限あるいは極めて安い料金」という契約の場合、移動先で使われる第三国の通信事業者は、少額のローミング料金を課すことができます。データ通信の安価なパッケージ料金は悪用・乱用のリスクが高く、回りまわって国内料金の値上げにつながりかねないことが主な理由です。データ通信に関する事業者間のローミング料金の上限は、当初は1GB(ギガバイト)ごとに7.7ユーロと設定されています。この額は毎年下がり、最終的に2022年に2.5ユーロまで引き下げられます。

※1^ 新ルール「Roam like at Home」において「自国」とは、「居住している国あるいは安定した関係性のある国」と定義されている。これは、現在のEU域内では、仕事や学業、引退後の年金生活などの理由から、「自国」が数カ国にまたがる人や、複数の国々に数週間ないし数カ月にわたって滞在したり、頻繁に行き来したりして生活している人が少なくないため。

関連情報

End of roaming charges for all travellers in the European Union: How does it work?(英語)

2017/06/13

この記事をプリントする