EUはどのように拡大してきたのですか?

2012/03/07

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Q1. 欧州連合(EU)はこれまでどのように拡大してきたのですか?
EUの歴史は、1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立にさかのぼります。第二次世界大戦後の欧州の復興に不可欠であり、かつ軍事資源でもある石炭と鉄鋼を共同で開発・運営することにより、平和と安定および繁栄を図ろうという思いを共有したベルギー、ドイツ(当時の西ドイツ)、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダの6カ国が、自国の権限の一部を移譲して共同体を創設したのです。この6カ国が、後の欧州共同体(EC)、それに続くEUの母体となりました。

その後、EUは5次の拡大を経て、現在では27カ国の加盟国を擁する大きな連合体となりました。特に、2004年には、1989年のベルリンの壁崩壊以降、政治・経済改革が進んだ中・東欧諸国および地中海諸国の12の加盟候補国のうち、10カ国が一挙に加盟するという歴史的偉業が達成されました。

EU拡大の歴史

加盟国
1952
ベルギー、ドイツ(旧西ドイツ)、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ(ECSC原加盟国)
1973
デンマーク、アイルランド、英国(第1次拡大)
1981
ギリシャ(第2次拡大)
1986
スペイン、ポルトガル(第3次拡大)
1990
東西ドイツの再統一により、旧東ドイツが編入
1995
オーストリア、フィンランド、スウェーデン(第4次拡大)
2004
チェコ、エストニア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキア(第5次拡大)
2007
ブルガリア、ルーマニア(第5次拡大の完了)

Q1・関連情報
EU加盟国情報(加盟27カ国一覧)
欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立から現在に至るまでの機構改革とEU基本条約の変遷については、こちらをご覧ください。
EUROPA 2010年春号 (通巻第261号)EUの基礎知識「EUの基本条約」

 

Q2. EUに加盟するには、具体的にどのような手続きが必要なのですか?
EU条約第49条によれば、自由、民主主義、人権および基本的自由の尊重、加盟国共通の法の支配の原則を尊重するいかなる欧州の国も、加盟を申請することができます。また、加盟の条件は、1993年のコペンハーゲン欧州理事会で、「コペンハーゲン基準」として原則化されました。これにより、加盟国としての責任を負い、かつその義務を遂行することで、EUの一員として地域の発展に寄与していくために必要な能力が、具体的に明示されたのです。

コペンハーゲン基準
  • 政治的基準
    民主主義、法の支配、人権およびマイノリティの尊重と保護を保障する安定した諸制度を有すること
  • 経済的基準
    市場経済が機能しておりEU域内での競争力と市場力に対応するだけの能力を有すること
  • 法的基準(EU法の総体の受容)
    政治的目標ならびに経済通貨同盟を含む、加盟国としての義務を負う能力を有すること

EUへの加盟申請を受理された国は、加盟候補国(Candidate Countries)として認められ、加盟交渉を開始することができます。EU側を代表して加盟国との交渉にあたるのは、欧州委員会の役割です。加盟交渉においては、EU加盟国が基本条約に基づいて積み上げてきたEUの法体系の総体、いわゆるアキ・コミュノテール(略してアキ)を、人、物、資本の移動、司法制度、社会制度、環境保護など35の分野(英語はchapter=章)ごとに、候補国の国内法に置き換えていく作業が行われます。加盟候補国は、EUからの経済的・技術的支援を受けつつ、国内法に置き換えられたEU法が適正な行政・司法機構によって効果的に施行されるよう、行政改革や公共投資を通じた国内体制の整備を行います。加盟交渉の進捗は候補国によって異なりますが、交渉が終了するまでには短くても数年かかります。

35分野すべての交渉が完結し、加盟がEU全体から承認されると、既加盟国それぞれと当該候補国の間で加盟条約が結ばれます。その後、この条約が全加盟国と加盟候補国で批准されると、ようやく加盟の運びとなります。

Q2・関連情報
EUROPA 2009春号(通巻第257号)EUの基礎知識「EU加盟手続き」

 

Q3. EUは今後も拡大していくのですか? それはなぜですか?
現在、クロアチアが、自国も含めた各国での加盟条約の批准手続き下にあり、2013年7月に28番目のEU加盟国となる予定です。また、マケドニア旧ユーゴスラビア、アイスランド、モンテネグロ、セルビア、トルコの5カ国が加盟候補国と認められており、そのうちアイスランドとトルコとは加盟交渉中です。

一方、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの3カ国は、加盟候補国になりえるとして、潜在的EU加盟候補国(Potential Candidates)と位置付けられています。これらの国々は、国内外の諸条件が整えられた時点で、まず加盟候補国として認められる必要があり、加盟交渉の開始はその後のこととなります。

わずか6カ国で発足したEUですが、これまで拡大を続けることによって大きな便益を得てきました。政治面では、民主主義、人権、安定、平和を確かなものとし、共産主義の崩壊といった大きな変化に対応する上でも役立ちました。経済面でも、より一層の繁栄と競争力強化が進められた結果、グローバル化の課題にも適切に対応できるようになっています。欧州には、何世代にも渡った分断と戦争の歴史がありますが、EUが拡大し、近隣諸国が豊かな市場経済を持つ安定した民主国家となることは、すべてのEU市民に恩恵をもたらすのです。

EUの加盟候補国と潜在的加盟候補国

加盟候補国
潜在的加盟候補国
クロアチア*
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国
アイスランド
モンテネグロ
セルビア
トルコ
アルバニア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
コソボ


* 加盟条約調印済み

 

Q4. トルコは果たしてEUに加盟できるのでしょうか?
トルコは、1987年に加盟申請を行いました。トルコの加盟交渉に時間がかかっている点については、よく誤解されますが、トルコがイスラム教の国であることとは関係がありません。EUの基本的価値のひとつに宗教の自由があり、その国の宗教が加盟交渉の過程で考慮されることはありません。

EUとの加盟交渉は、国内法をEU法に合わせて修正するなど、非常に複雑で技術的な過程を経て行われます。トルコは、EUの求める高度な要件に応えるべく努力を払ってきていますが、加盟に必要な条件をすべて満たすには至っていないのです。

 

Q5. EUの拡大に伴って、ユーロ圏も拡大するのですか?
単一通貨ユーロが、現金を伴わない決済用の通貨として誕生したのは、1999年のことです。2002年にはユーロの紙幣と硬貨の流通が始まりましたが、その時点で通貨ユーロを導入していたのは、EU加盟国15カ国中12カ国でした。

2012年現在、ユーロ導入国(いわゆるユーロ圏)は、EU加盟国27カ国中17カ国まで拡大しています。ユーロを導入していないEU加盟国のうち、2002年時点で未導入の3カ国には免除規定がありますが、2004年以降のEU加盟国には、条件が整い次第ユーロを導入することが義務づけられており、EUの単一市場を支えるユーロ圏はこれからも拡大していくことになっています。

ユーロを導入している加盟国(ユーロ圏)と導入年

2002年
ベルギー、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド
2007年
スロヴェニア
2008年
キプロス、マルタ
2009年
スロヴァキア
2011年
エストニア

 

EU加盟国(€:ユーロ導入国)、加盟候補国および潜在的加盟候補国

 

この記事に関連する情報
欧州委員会拡大総局(英語) 
EUROPA 2009年夏号 (通巻第258号)EUの基礎知識「EU統合の手法」
EUROPA 2007年冬号 (通巻第248号)特集「EUの拡大」

2012/03/07

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