EUの競争政策とは何ですか?

2012/12/28

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Q1. 競争政策とはどんなものですか?

競争政策とは、競争法(日本では独占禁止法にあたる)に基づき、欧州連合(EU)の域内単一市場において、企業間の自由で公正な競争を押し進め、それにより一般消費者に恩恵をもたらし経済の健全な発展を図るための政策です。EUの行政機関である欧州委員会が、そのための各種の施策を講じています。欧州委員会は、いわば、スポーツの試合の審判を務めているともいえます。競争政策に関する法的根拠は、EUの機能に関する条約(the Treaty on the Functioning of the European Union、通称TFEU)に規定されており、政策の権限は加盟国からEUに移譲されています。

 Q2. 域内単一市場において競争が重要なのはなぜですか?

競争は、EUの単一市場が機能するために不可欠です。企業間の公正で自由な競争により、消費者にとって商品やサービスの価格は下がり、品質が上がり、選択肢が増えることになります。生産者が競争することで、技術革新を生み出し、経済活動の効率も上がります。域内市場で競争力がつけば、事業は域外市場へも拡大していくでしょう。

加盟国の財政危機などにより、EU経済はここ数年停滞しています。EU市場で活気ある経済活動が行われ、不況を脱するためにも、競争政策は重要な役割を果たします。EUの経済成長戦略『欧州2020』(※1)では、開かれた歪みのない域内市場がEU企業の競争力を高め、持続可能な成長につながると強調されています。

Q3. 公平な競争を阻害する状況に対してEUはどんな措置をとるのでしょうか。

欧州委員会の競争総局(Directorate-General for Competition)は、定められた法規制に基づき、競争政策を実施しています。市場寡占に結びつく企業の合併・買収、競争を制限するようなカルテル(企業が結託して価格操作や市場分割などを行う)やトラスト(独占的利益を目的とした資本結合)などの取り決めを結ぶこと、および支配的立場の濫用について監視しているほか、加盟国の国家補助が競争を歪曲しないよう規制しています。さらには、特定部門の自由化の推進を行っています。

合併
EU域内で活動する企業が合併する際、当該企業が世界中のいずれの国で設立されていようと、合併後の企業の全世界での売上高が50億ユーロ以上で、EU市場での売上高が2億5,000万ユーロ以上ある場合は、欧州委員会に届け出る必要があります。それ以下の規模の場合は加盟国当局で審査が行われます。事前審査で競争を歪めると判断された場合は合併が禁じられます。現在の合併規則が発効した1990年以降、欧州委員会は4,600件を超える審査を通し、そのうち合併を阻止したのはわずか22件です。次の事例のように、ある種の懸念が残る場合には条件付きで承認することもあります。

【事例】合併: 欧州委員会、グレンコア社によるエクストラータ社の買収を条件付きで承認

反トラスト
水平的(同業者間)または垂直的(同じ流通ルートの上下間)合意により競争を阻害する行為を行うこと、また、ある市場において支配的な立場を濫用することは禁じられています。違反行為に対しては驚異的な額の制裁金が科せられるため、これが抑止力となっています。

【事例】反トラスト: 欧州委員会、ブラウザ選択に関する約束の不履行を受けマイクロソフトに異議告知書を送付

カルテルは、事業者らが共同で行う価格や生産量などの不当な取引制限のこと。結果として消費者は、商品の品質に見合うよりも高い価格を支払うことになります。カルテルの制裁は反トラストの特殊な形態といえます。リニエンシー制度と呼ばれる減免措置は、カルテルの証拠を欧州委員会に最初に通報した企業が、制裁金の支払いを免じられる手法で、カルテル防止・離脱に有効な手立てとなっています。

【事例】欧州委員会、裁判所の判断を受けて、ガス絶縁膜開閉装置に関するカルテルで三菱電機、東芝に制裁金を科すことをあらためて決定

欧州委員会による制裁金額トップ5 (2009年時点)

1 インテル 米国 支配的な立場の濫用 2009年 10.6億ユーロ
2 マイクロソフト 米国 2004年3月の決定義務(本表第5位)の不履行 2009年 9億ユーロ
3 サンゴバン フランス 自動車用ガラスカルテル 2008年 9億ユーロ
4 エーオン/GDFスエズ 独/仏 天然ガス輸入カルテル 2009年 それぞれ5.5億ユーロ
5 マイクロソフト 米国 支配的な立場の濫用 2004年 5億ユーロ

出典:『EUの規制力』第5章 日本経済評論社

 

国家補助
加盟国政府は、特定の経済活動を奨励したり、国家の産業を保護するために一部の民間企業を公的に支援することがあります。これらの国家補助が公正な競争と域内貿易にとって好ましくない場合、欧州委員会は禁止または介入を行います。3年間で10万ユーロ以下の補助金等、加盟国間の貿易に影響をきたさない程度の国家補助はこれに含まれません。

【事例】国家補助: 欧州委員会、デクシアの救済措置を暫定承認し、徹底調査を開始

自由化
鉄道や航空などの運輸、電気やガスといったエネルギー、郵便、電話などの通信サービスは、これまで開かれた競争が行われておらず、欧州委員会が間に入って自由化が進められてきました。自由化により、消費者の選択の幅は広がり、経済に競争力がつくといえます。

以上のような行動全般につき、欧州委員会は、EUレベルの競争法が全加盟国で同様に適用されるよう、各加盟国の競争当局との間で緊密に協力しています。

Q4. 日本とはこの分野での協力関係はありますか?

域外の企業でも、EU域内で事業を行う際には、EUの競争法に従わなければなりません。国際的な合併やカルテルの阻止などで、各国の競争当局は互いに協力体制を取っています。日本とEUは、2003年に競争に関する協力協定を結び、日本の公正取引委員会とEUの競争総局間で年次協議が開催されています。また、国際競争ネットワーク(International Competition Network)のカルテル作業グループで共同議長を務めたり、合併に関し並行審査や調査協力を行ったりしています。

参考文献

欧州委員会競争総局ウェブサイト
European Commission, EU competition policy and the consumer

関連記事

『ヨーロッパ』誌2009年春号特集 「重要性高まるEUの競争政策――公明、公正、公平を守る」

 

(※1)^ 『ヨーロッパ』誌2010年夏号特集参照

2012/12/28

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