EUワインのラベルを読み解くセミナー -11月20日

2015年11月20日、東京・上野の国立科学博物館で開催中の「ワイン展 ―ぶどうから生まれた奇跡ー」(主催:国立科学博物館、読売新聞社、日本テレビほか/後援:駐日EU代表部、フランス大使館、イタリア大使館、ポルトガル大使館、スペイン大使館ほか)の関連イベントとして、駐日EU代表部が「ヨーロッパ産ワインのラベルを読み解く」と題したセミナーを開いた。講師は、来日中の欧州委員会農業総局(ベルギー・ブリュッセル)に務めるEUワイン政策の専門家ルディ・ファン=デル=スタッペン氏。詰め掛けた仕事帰りのサラリーマンやOLなど約80名を前に、ワインのラベルや容器などに関するEUの規則の概要を、逐次通訳を介して紹介した。

講師はまず、EUでは、ワインとは生のブドウもしくはブドウ液を完全あるいは部分的にアルコール発酵させることにより得られる製品のことを指す、と定義した上で、ボトルは750mlが基準であり、ボトルの栓(例えばコルク)を覆う素材に鉛を使用してはならない、発泡性ワインはコルクでできたマッシュルームの形状をした栓で閉じられたガラス製のボトルで供されなければならないーーなどの規則があることに言及。さらに、EUワインのラベルに表示される情報は、ワインの種類(非発泡、発泡もしくは甘味ワイン〈=酒精強化ワイン〉など)、アルコール濃度、原産国などの「義務的表示事項」、収穫年(使用ブドウの85%以上が同一年に収穫されていること)、使用されているブドウの品種名(表示されている品種と実際の使用品種が合っていなければならない)、地理的表示(GI)の保護が付されているワインの場合の地域名といった「規制されている任意的表示事項」、および「規制されていないその他の事項」(正確な情報であり、消費者に誤解や戸惑いを与えない場合に含むことができる)の3カテゴリーに分かれる、と説明した。GIを保護する2つの認証制度、PDO(原産地呼称保護)とPGI(地理的表示保護)のマークについては表示義務はなく、多くのワイナリーはマークではなく特定の地域の呼称を表示することで付加価値を高めている、とも付け加えた。

歴史が長く、その品質は世界的にも定評があるEU産ワイン。ルールは汎EU的でありつつも、各加盟国にある程度の裁量が任される形で運用し、そこに各国の文化や伝統の違いを表わす余地をもたせていることや、ラベルのデザインも最低限の義務的表示のみに徹したシンプルなものから、装飾や情報が過多なものまで千差万別であること、さらには、EUワインとニューワールドワインのラベルの体裁の違いなど、講師の具体例を挙げながらの説明に、参加者は熱心に耳を傾けていた。日本でよく見られるフルボディやライトボディなどの表示に関する質問への、「EUではそのような表現は用いないし規制の対象にもなっていない」という答えには多くの参加者が驚いていたようで、ふだん何気なく見ているワインのラベルにもさまざまな意味があり、それぞれがEUワインの歴史や各国のワイン文化を物語っている、ということに納得していた様子だった。

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