新しい十二支の始まりは日・EU関係にとっても飛躍の年

東京オリンピック・パラリンピックの開催がとりわけ楽しみな2020年は、12年で一巡する干支の始まりの年、子年に当たります。欧州連合(EU)と日本の関係においても、新たな局面を迎え、一歩先へと進むのにふさわしい年であると言えましょう。

しかし、新年を迎えたとはいえ、世界にはEUと日本の双方に関わる課題が山積しています。つまり、わたしたちは、戦略的パートナーとして、さまざまな分野について、国際会議や多国間協議の場において緊密に協力することが必要となります。その意味で、昨年の日・EU経済連携協定(EPA)の発効、戦略的パートナーシップ協定(SPA)の暫定適用の開始および「持続可能な連結性と質の高いインフラに関する日・EUパートナーシップ」の署名は、極めて時宜を得たものでした。

安全保障の分野では、欧州と日本は、イランと北朝鮮に関して同様の懸念を共有しています。イランについては、核合意である包括的共同行動計画(JCPOA)の維持という目的を共に追求し、その目的に向かって取り組んできました。とりわけ、EUは同合意の実施状況を監視する合同委員会の調整役としての関与を通じて、そして安倍晋三総理大臣は、イランのハッサン・ロウハ二大統領との直接対話を通じて、この問題に取り組んできました。北朝鮮については、EUと日本は、交渉を通じた完全かつ検証可能で不可逆的な非核化の実現、および、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁の完全実施を求め、一致団結して取り組みを継続しています。さらに広い領域では、「アフリカの角」沖の海域をはじめ、欧州とアジアを繋ぐ航路などにおいて、海洋の安全を確保することに共に取り組んでいます。

経済の分野では、EUと日本は世界貿易機関(WTO)の改革を推進し、ルールに基づいた国際制度を守るため、 協力していきます。この点では、米国とも緊密に連携しています。また、電子商取引や税制に関する規則や指針の策定や、人工知能やロボット工学、モノのインターネット(IoT)に関する共同研究とイノベーションの促進など、デジタル時代の新たな課題の解決のためにも緊密に連携することが必要です。

このようにやるべきことが山ほどある中、EUと日本のパートナーシップは本年大きく躍動することが予想され、また双方の首脳陣もそれに向け意欲的に取り組もうとしています。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が、就任初日に安倍総理大臣と有意義な電話会談を行った一方、ジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表と茂木敏充外務大臣は、12月に開催されたASEM(アジア欧州会合)外務大臣会合の期間中に詳細な意見交換を行いました。2020年は、 日・EU定期首脳協議も予定され、多くのハイレベル会合や分野別対話の開催で特徴づけられる一年となるでしょう。

パトリシア・フロア
駐日欧州連合特命全権大使

Patricia FLOR
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary of the European Union to Japan