障害者も参画するEUのユニバーサル社会づくり

PART 2

アクセシビリティ推進都市を表彰――アクセスシティ賞

先進国では、人口の高齢化にともなって身体の不自由な市民の割合が増えている。こうした人々が自宅に閉じこもることなく、自分の力で社会生活が送れるよう、アクセシビリティ(Part1参照)の進んだ都市の取り組みを表彰し、成功事例を他の都市とも共有しようと、欧州連合(EU)は2010年からアクセスシティ賞を授与している(運営担当は欧州委員会司法総局)。これまで開催した3回で受賞した都市の取り組みを紹介する。紹介ビデオ

今やEU域内の5人に4人は都市部に住む。障害のある人でも孤立することなく、健常者と同様に都市生活を送る権利がある。アクセスシティ賞では、すべての市民が年齢や障害の有無に関係なく基本的権利を享受し、生活の質を向上させ、都市資源や娯楽にアクセスできるよう、積極的に取り組み成果を上げている都市を認定、表彰する。EU域内の人口5万人以上の都市が応募の対象だが、それより小規模の場合は別の要件を満たせば応募が可能。

この賞では次の4分野のアクセシビリティが審査される。

  • 建物の環境と公共空間
  • 交通機関と関連インフラ
  • 新技術を含む情報通信
  • 公共機関とサービス

アクセスシティ2011 スペイン・アヴィラ Avila, Spain

アヴィラ市は、海抜1,127メートルの丘の上に立つスペインでもっとも高地にある都市で、人口は約6万人。中世からの城塞を残し、史跡も多く、1985年にユネスコの世界文化遺産に登録されている。その地形から、身体の不自由な人のアクセスには課題が多かったが、2002年から市議会の特別行動計画の下、積極的に取り組んできたことが評価され、初のアクセスシティに選ばれた。

段差(左)をスロープ(右)に

アヴィラ市ではアクセスシティ実現について、新たに作るものについてはすべてアクセシブルに、アクセシブルであればすべてそれを守ること、そしてアクセシブルでなければすべて改善していく、という考え方を踏襲する。具体的には、歴史的建造物の出入り口の段差をスロープに変えたり、手すり付きトイレに改良したり、必要な情報を掲載した標識や地図、パンフレットを用意するほか、ガイドの研修や誰もが参加できるイベントを企画したりしている。アヴィラは、アクセシビリティ都市の草分けとして、本年6月には「すべての人のための観光」をテーマに国際会議を主催した。

通路はアクセシブルに、観光客向けイベントでは手話の解説サービスも

写真出典: League of Historical and Accessible Cities 資料 © LHAC 2013

アクセスシティ2012 オーストリア・ザルツブルク Salzburg, Austria

授賞式でトロフィーを掲げるハインツ・シャーデン ザルツブルク市長。同市のアクセシビリティ政策は市長室の直轄だ。左隣は司法・基本的権利・市民権担当のビビアン・レディング欧州委員会副委員長(2011年12月1日、ブリュッセル) © European Union, 2013

「出先の環境に不安があれば、外出しづらいものです」と話すのは、ザルツブルク市役所の障害者担当マネージャー、サビーネ・ノイシュース(Sabine Neusuess)さん。ザルツブルク市は、1997年に障害者協議会を立ち上げ、障害者や関連団体の代表者が政策決定に関わりながら、バリアフリー都市を目指している。アクセスシティ賞の受賞はその長期戦略実践の結果、定期的な調査や評価を含めた取り組みの成果に対して与えられた。

視覚障害者のための触知ガイドシステム(Tactile Orientation and Guidance System for the Blind and Partially Blind)が、交差点、広場、バス停、公共機関、エレベーターや傾斜路など至る所に設けられている(写真)。アクセシブルな街に改善していくことで、障害者だけでなく、高齢者も恩恵を受ける。「家の中に閉じこもってしまう人々を支えるために税金が使われるよりも、彼らが外で仕事ができた方が経済効果も大きいでしょう」とノイシュースさん。

長期的視野に立って人々の意識を高めるため、学生や教員、公共機関の職員に対して研修も行う。同市は、鉄道中央駅を改修しており、アクセシビリティが改善された駅は2014年にオープンとなる。

ビデオ アクセス・シティ2012 ザルツブルク

詳細 ザルツブルク市 Nomination Document

アクセス・シティ2013 ドイツ・ベルリン Berlin, Germany

ドイツの首都、ベルリンは人口350万人、面積892km2と、ドイツそして中欧でも最大の都市だ。この都市は、健常者・障害者に関わらず、ユニバーサルに公共インフラや施設、サービスを利用できることを目的としてアクセシビリティ戦略を取ってきた。この中でも20年にわたって続くプロジェクトに、モビダットがある。これは、娯楽施設から福祉・医療に至る生活全般に関連する35,000以上の施設のアクセシビリティ情報をデータベース化したものだ。目的は、障害のある人たちが、ベルリンの街で自在に活動できるよう支援すること。それぞれの情報を、専門家と、障害者を含むボランティアの両方が現場で検証し、2~3年ごとに情報を更新している。予算は州政府ほか公的機関から拠出され、スタッフ196人のうち障害のある43人も働いている。

ビデオ Mobidat Raises Public Awareness for More Accessibility in Berlin

ベルリン交通局(BVG)のバス車両は全てバリアフリーになっている(左)。©Joite 市内施設のアクセシビリティを調査するモビダットのボランティアたち

バリアフリーシティを目指して話し合う会議参加者たち

また、議会の主導で年に4回開催される「バリアフリー・シティ」という円卓会議では、政府、産業界、障害者や高齢者を代表する団体から関係者が一堂に会し、バリアのないアクセシビリティを実現するための優先課題や取り組みを話し合っている。

将来的には、「すべての人のためのデザイン」というアプローチで、2020年までに地下鉄全駅やトラムといった交通機関のバリアフリー化など、障害者政策ガイドラインを実行する。つまり、障害者や高齢者のための特別な解決策を取るのではなく、年齢、性別、障害の有無や文化的背景に関わりなく、誰もが公共の施設や空間を使用しながら、独立して社会で活躍できるようにする。2013年の優先課題は、アクセシブルな観光地としてベルリンを発展させていくことだ。

詳細 Access City Award 2013

関連情報

European Network for Accessible Tourism
Berlin Design for All manual