2017/07/25

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PART 1

EU・中国の関係の現状

2017年6月、欧州連合(EU)と中国は19回目となる定期首脳会議をブリュッセルで開催、温暖化対策の実行や地域・国際的課題解決などに向け協力関係をさらに進めることで一致した。ここ数十年で様変わりしたEUの対中関係。PART 1では各分野における協力関係の現状を紹介する。

1975年の外交スタート以降、深まるEU・中国の協力関係

この数十年の間で大きな成長と変化を遂げた中国。急速な経済発展と人口増加によって前例のないスピードで変貌し、国内の変革はもちろん、国際社会での存在感も増している。28の加盟国を合わせた人口が5億人を超える欧州連合(EU)は、その倍以上の13億人の国民を抱える中国を、経済のみならず政治的にも重要なパートナーと位置付けている。

EUと中国が正式に外交関係を樹立したのは1975年。翌1976年には行政執行機関である欧州委員会のトップとして初めてロイ・ジェンキンス委員長が訪中、鄧小平総書記と会談した。1988年に北京に欧州委員会の事務所を開設して以降は、首脳会議(EU・中国サミット)を定期的に開催し、継続的に関係の発展を図っており、二者間協議は今や60分野以上に及んでいる。2013年の定期サミットで採択された「EU・中国2020年戦略的計画(EU-China 2020 Strategic Agenda for Cooperation)」は、平和と安全保障、経済発展、持続可能な開発、そして人的交流まで幅広い分野における協力関係を定めており、現在の両者のパートナーシップの礎となっている。

2016年には「EUの新たな対中戦略のための構成要素(Elements for a new EU Strategy on China)」と題したコミュニケーション(政策文書)を採択、EU自身の中国に対する外交戦略を定め、EUと中国それぞれの市民にとって長期的な利益をもたらすための指針を示した。

世界経済におけるビッグパートナーのEUと中国

20年前、欧州と中国の貿易はそれほど多くはなかったが、今やEUは中国最大の貿易相手になっている。特に2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、EUと中国の貿易額は年々増加。2016年の輸出入総額(物品貿易)では、中国の貿易相手先第1位がEU。一方、EUの貿易相手先としても、中国は米国に次ぐ第2位となっている。1日あたり14億ユーロを超える取引があり、2016年のEUから中国への輸出額は1,700億ユーロ、輸入額は3,450億ユーロに上っており、両者の利害関係は互いの繁栄と持続的発展にとって非常に重要なものとなっている。

EUの対中国物品貿易の輸出入額と収支の推移(2006~2016)

出典:European Union, Trade in goods with China

 

EUの物品貿易相手先と規模(2016)

中国の物品貿易相手先と規模(2016)

出典:European Union, Trade in goods with China

そのためEUと中国は、毎年開催している経済・貿易に関するハイレベル対話の下、投資、サービス、調達、知的財産権などを含む主要な経済貿易問題について協議を行っている。EUは相互に同程度の市場開放を行うことと、中国が公表した経済改革計画を進展させることに主眼を置いている。現在問題となっている、鉄鋼分野における中国の過剰生産能力については、中国が国際的な対話や情報交換の場で議論に参加することが期待されているが、EUとしては鉄鋼分野における構造改革の経験と実績を中国と共有し、二者間のパートナーシップという側面からも中国の取り組みをサポートしたい考えだ。

投資、研究開発分野で進む連携強化

2000年~2016年の間、EU企業は中国に1,410億ユーロ以上を投資する一方で、同期間の中国の対EU投資は1,100億ユーロであった。ただし、2016年のEUの対中投資は前年に比べ2割以上減り、過去10年で最低レベルにまで落ち込んでおり、投資環境の改善のため、現在両者間の包括的投資協定が交渉中である。EUと中国は、特に、EUが進めるユンカー・プランとも呼ばれる「欧州投資計画(Investment Plan for Europe)」と中国の「一帯一路計画(Belt and Road Initiative)」、それぞれの重要投資計画に対して互いに強い関心を持っている。

出典:EU CHINA RELATIONS

また、双方は欧州とアジアの全てのパートナーにとってプラスとなる、アジアのコネクティビティ(連結性)向上を支援することにも取り組んでいる。5月に中国・北京で開催された「一帯一路フォーラム」に、EUからユルキ・カタイネン欧州委員会副委員長が参加し、欧亜間の連結強化に向けたEUの方針を示している。

研究開発協力はEU・中国関係の核であり、双方の研究・イノベーション資金助成計画を相互に利用できるよう取り組んでいるところである。EUでは大規模研究助成プログラム「ホライズン2020」の一環で、共同資金助成メカニズムを構築し、共通の関心のある戦略的研究分野での長期的共同研究などを支援している。

中国からEUへ観光で訪れる人の数はここ10年で著しく増加しており、奨学金を得て留学や研究をする人も双方併せて既に3万人を超えている。2016年11月には初のEU・中国教育大臣会合を開催。文化事業やフェスティバルの実施を通じた人的交流のさらなる発展に向け、協力関係の構築を進めている。

地域や第三国での安全保障に共に取り組む

安全保障・防衛分野も中国との協力をさらに進めることのできる分野だ。イラン核合意に向けた中国の建設的な関与により中東問題での今後の両者間の積極的な協力を方向づけた。中国は国連安全保障理事会常任理事国としても、この地域での多くの紛争の解決策を模索する上で、EUの重要なパートナーである。このため、アフガニスタン、シリア、リビアでの紛争処理や地球規模の移民・難民問題への対応、テロ対策を共に取り組む最重要課題に掲げている。

サイバーセキュリティ分野では、2012年に「EU・中国サイバータスクフォース」を発足。サイバー空間における国際的な法整備やインターネットガバナンス、オンラインの人権問題、情報通信技術(ICT)の標準化などについて議論を進めている。

中国は地域のさまざまな問題を解決する上でEUの重要なパートナーでもあり、毎年、閣僚級の戦略的対話を開き、外交・安全保障問題に関する定期的な意見交換を実施している。EUとしては国際社会での存在感と役割の重要性が高まる中国に対して、グローバルな安全保障問題へのより積極的な参加を促したい考えだ。特に東シナ海・南シナ海における航行の自由と上空通過の自由については国際法に則り、平和的な手段で事態の収束を図ることを期待している。

米国の方針転換を受けて相対的に高まるグローバルな役割と責任

気候変動、エネルギー、資源効率といったグローバルな課題の解決において、中国との協力強化は得るものが多い。特に環境問題では、2017年1月の政権交代を受け、米国が気候変動に関する国際的な枠組みを定めたパリ協定からの離脱を表明。EUと中国の果たす役割と責任はさらに高まっている。今般の首脳会議では、パリ協定を基に、両者は国内緩和政策、炭素市場、低炭素都市、航空・海運産業からの温室効果ガス排出、代替フロンなどの関連分野における協力関係強化が話し合われた。

またPART 2で取り上げる今年の定期首脳会議でも、気候変動問題における連携が主要な議題となり、両者の関係強化はさらに進んでいる。エネルギー問題に関しても、EUと中国は2016年、EU・中国エネルギー協力のための行程表に合意。代替エネルギー製品やエネルギー効率、エネルギー市場の設計、エネルギー関連規制などの分野を網羅した同行程表の中で、二者間協力関係をより強固にすることを確認している。

出典:EU CHINA RELATIONS

対話を通じ相互理解を目指す「人権問題」と「法の支配」

人権の尊重を基本理念とし、域内に限らず、世界各地で人権尊重に関する取り組みを積極的に進めているEUは、中国国内の人権状況に関し、たびたび懸念の声を上げてきた。

EUは1995年から、中国国内の人権尊重と法の支配をより一層育むために毎年「人権に関する特別対話」を開催しているほか、EU人権問題特別代表が定期的に中国を訪問している。また、互いの異なる法体系に対する理解を深めるため、EU・中国法務対話が2016年6月に初めて開催された。この対話によって法の支配に関する意見交換やより深い相互理解が得られ、その結果として幅広い分野のEU・中国の協力関係にフィードバックされることが期待されている。

2017/07/25

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