EUとG20大阪サミット

昨年のG20ブエノスアイレス・サミットに集ったユンカー欧州委員会委員長(左より)、トゥスク欧州理事会議長、安倍総理大臣(2018年11月29日、ブエノスアイレス)
© European Union, 2018 / Source: EC – Audiovisual Service / Photographer: Etienne Ansotte

2019年6月28日、29日の両日、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが大阪で開かれる。ルールに基づく国際秩序を支持し、多国間主義を重要視するEUは、G20の正式メンバーとして議論に積極的に関与していく。本稿では、EUとG20の関係をはじめ、議長国日本を支持するEUの立場や優先課題について概説する。

G20の経緯と正式メンバーとしてのEU

20カ国・地域首脳会合(G20)の正式名称は、「金融・世界経済に関する首脳会合」。世界経済の成長促進を最大の目的とし、参加国・地域を合わせると世界の国内総生産(GDP)の8割以上、および世界人口の約60%を占める「国際経済協調の第一のフォーラム」として位置付けられている。

G20は、主要7カ国首脳会議(G7)のメンバーであるカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国および欧州連合(EU)に加えて、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの20カ国・地域で構成される多国間協議のプラットフォームである。EUは、G20メンバーの中では中国、インドに次ぐ人口を擁し、世界の名目GDPでは、米国(24%)に次ぐ21.4%を有する世界最大級の経済圏だ。EUは通商や経済政策、開発、エネルギー、気候変動などの分野において国際的に大きな役割と担っていることもあり、G20には開始当初から正式な常任メンバーとして参加している。

G20大阪サミットの公式ロゴ

EU加盟国のうち、フランス、ドイツ、イタリア、英国がG20の常任メンバーであるほか、スペインが常任招待国として、またオランダが今年も招待国に加わっており、G20におけるEUの存在感は大きい。G20大阪サミットの首脳会合(6月28日、29日)には、ドナルド・トゥスク欧州理事会議長とジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長が出席することとなっている。

また、G20には多くの招待国際機関(国連、国際通貨基金〈IMF〉、世界銀行、世界貿易機関〈WTO〉、経済協力開発機構〈OECD〉など)からの代表者も出席する(G20大阪サミットのメンバー、および招待国・国際機関の一覧はこちら)。

G20大阪サミットのメンバーおよび招待国

もともとG20は、アジア通貨危機に対処するため、さまざまな国々の財務大臣や中央銀行総裁が集まる国際会議として、1999年12月にドイツで開催されたのが発端。2008年11月には、リーマン・ショックが引き金となった世界的な経済・金融危機への対応のため、それまでの財務大臣・中央銀行総裁会議を首脳級に格上げする形でG20首脳会議が開催され、定例化した。2010年まではほぼ半年ごと、2011年以降は年1回のペースで、今日に至るまで開催されている。

議長国は持ち回り制で、前年12月から開催年11月までが任期となる。議長国はこの任期内に、首脳会合のほか関係閣僚会合を主催し、その準備のための会合も設ける。EUからも、5月~11月にかけて国内8都市で開催される各関係閣僚会合およびさまざまな準備会合に代表が出席する(G20主要会合の日程、およびEUからの出席者については、文末の表を参照)。

G20大阪サミットで日本と協働するEU

G20ブエノスアイレス・サミットの会期中に行われた日本との二者間会談。左はトゥスク議長(2018年12月1日、ブエノスアイレス)
© European Union, 2004-2019

日本とEUの間には、本年2月1日に発効した日・EU経済連携協定(EPA)によって、世界のGDPの約3分の1を占める人口6億余りの巨大な自由貿易圏が形成されている。すでに暫定適用が始まっている戦略的パートナーシップ協定(SPA)と合わせて、日本とEUは極めて緊密な経済的・政治的な協力関係を構築している。

G20大阪サミットに先立ち、本年4月25日にブリュッセルで開催された第26回日・EU定期首脳協議で、トゥスク議長は、ユンカー委員長および安倍総理との共同記者会見の場で「EUは日本のリーダーシップを全面的に支援したい。日本には、EUを信頼していただきたい。われわれは今回のサミットが、両市民のためだけでなく、ルールに基づいた国際秩序のためにも、必ず成功に導くよう全力を尽くす」とG20議長国日本への協力と支持を力説した。

また共同声明の中でも、WTOを中心とする多角的貿易体制を強化・改革すること、デジタル分野での協力を強化すること、パリ協定の目標達成やプラスチックごみへの対処、持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる国連の「2030アジェンダ」へのコミットメントなど、地球規模の課題やガバナンスにおいて、G20 の場で協力することが明記された。特にデジタル分野では、議長国である日本が提示した「信頼性に基づく自由なデータ流通(DFFT)」のイニシアチブの構想を支持し、データの潜在性を活用するための「大阪トラック」の立ち上げに協働することが確認された。

G20大阪サミットでのEUの主な優先課題

EUは、多国間主義の擁護において主要な役割を担っている。G20のような国際的な場で協力することで、EUは世界の信頼を高め、世界規模の課題に取り組むことができる。G20大阪サミットでEUが優先して取り組む課題は、次のとおりである。

G20 大阪サミット参加にあたり、欧州委員会は、EUの主要優先課題や日・EU関係、また国際的な課題へのEUの取り組みなどを説明する冊子を作成。本稿のEUの主な優先課題は同冊子より抜粋・翻訳(冊子を見るには画像をクリック)

●世界経済への信頼の向上

EUは、経済が著しく減速する中で、世界経済への信頼について強いメッセージを発信する。

●世界貿易機関(WTO)の改革を中心とする、多角的貿易制度の機能の改善

EUは、ルールに基づく国際貿易を守るために常に闘う。EUは、貿易上の緊張の緩和に向けたG20の取り組みを支持する。WTOの改革に関してG20ブエノスアイレス・サミットで協議された内容を実行に移すことや、現状に基づく「鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバルフォーラム」の延長および既存のコミットメントの実施などに取り組む。

●デジタル変革の活用

EUは、本年のG20議長国である日本のデジタル化に関する優先課題を支持する。デジタル経済の課税に関する、2020年までの世界規模の解決を推進するほか、データ保護とデータの自由な流通は両立するとして、日本が提唱する「信頼性に基づく自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust=DFFT)」構想を支持する。

●格差と高齢化社会への対応

EUは、議長国日本の高齢化社会に対する共通の解決策を検討する優先課題を支持。また、女性のエンパワーメントに対する、G20首脳によるコミットメント――特に、2014年のブリスベン・サミットで合意した労働参加率の男女格差の縮小に必要な対策の推進――の履行を継続する重要性を強調する。

●環境保護と気候変動対策

EUは、野心的なCO2排出量の2030年削減目標をはじめとする、パリ協定の完全かつ実効的な実施に対するコミットメントを再確認する。EUは、2019年9月の国連気候サミットおよび11月の気候変動条約締約国会議(COP25)に先駆けて、強いメッセージを発信することを望む。資源の効率性、経済成長と環境劣化のデカップリング(非相関化)、EUが推進している循環経済アプローチの重要性の強調(特に製品デザインや廃棄物抑制を通じた海洋プラスチックごみの排除)に関するG20の取り組みを支持する。

●包摂的で持続可能な世界の実現

EUは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals=SDGs)」の完全な実施の重要性を強調し、2019年9月に米国ニューヨークで開催されるハイレベル政治フォーラムに先駆けて、こうした取り組みを支持する強いメッセージを発信する。また、環境・経済・社会的に責任のある投資の基盤となる「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を支持する。EUはまた「持続可能な投資と雇用に関するアフリカ・欧州のアライアンス」を促進し、「G20アフリカ・パートナーシップ」への支持を再確認する。

●テロ対策に関するG20コミットメントの遂行

EUは、テロ対策への強い支持を表明する。具体的にはテロ対策に関するG20ハンブルク首脳宣言を実行に移すことや、人権と基本的な自由を完全に尊重しつつ、オンライン上のテロリスト・コンテンツの拡散防止に向けた集団的努力を強化することを含む。

●移住や強制移動に対する世界の責任の促進

EUは難民問題を巡り、移住や強制移動に関する国際的な協力の継続が必要であることを訴える。

 

表:G20大阪サミット 首脳会合・関係閣僚会合の日程とEUからの出席者

 会合  開催地  日程  EUからの出席者
農業大臣会合 新潟県新潟市 5月11日、12日 フィル・ホーガン欧州委員会委員(農業・農村開発担当)
財務大臣・中央銀行総裁会議 福岡県福岡市 6月8日、9日 ピエール・モスコビシ欧州委員会委員(経済金融問題・税制・関税担当)
マリオ・ドラギ欧州中央銀行総裁
貿易・デジタル経済大臣会合 茨城県つくば市 6月8日、9日 アンドルス・アンシプ欧州委員会副委員長(デジタル単一市場担当)
セシリア・マルムストロム欧州委員会委員(通商担当)
持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合 長野県軽井沢町  6月15日、16日 ミゲル・アリアス・カニェテ欧州委員会委員(気候行動・エネルギー担当)
カルメヌ・ヴェッラ欧州委員会委員(環境・海事・漁業担当)
首脳会合 大阪府大阪市 6月28日、29日 ドナルド・トゥスク欧州理事会議長
ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長
労働雇用大臣会合 愛媛県松山市 9月1日、2日 マリアンヌ・ティッセン欧州委員会委員(雇用・社会問題・技能・労働力の移動担当)
保健大臣会合 岡山県岡山市 10月19日、20日 未定
観光大臣会合 北海道倶知安町 10月25日、26日 未定
外務大臣会合 愛知県名古屋市 11月22日、23日 未定
 ※ 上記の表には欧州委員会委員長・委員と欧州理事会議長以外のEUからの参加者は含まず。

関連情報
G20大阪サミット2019 (公式ウェブサイト)