EUとG7伊勢志摩サミット

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PART 2

各G7閣僚会合に臨むEUの立場と役割

主要国首脳会議(G7サミット)と併せて、外相会合など分野別の閣僚会合が日本各地で開催される。PART 2では閣僚会合トップに開催される外相会合に臨むEUの考え方とともに、他の閣僚会合への参加予定者とEUの考え方・提言などを紹介する。

広島外相会合に向けたEUの意気込み

5月26、27日に三重県志摩市賢島で開催される主要国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)に前後して、4月から9月にかけ外交、農業や経済、情報通信、エネルギー、環境、保健など各課題を担当する閣僚が集まる関連会合が日本の10都市で開催される。そのトップを切って4月10日と11日に行われる外務大臣会合(G7広島外相会合)は、EUが特に重要視している会合の一つだ。日本の岸田文雄外務大臣が議長を務める今回の会合に、EUからはフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長が参加する。

EUとその加盟各国はG7が地球規模の問題に取り組む上でリーダーシップを発揮している。EUと加盟国を合わせて世界の政府開発援助(ODA)の半分以上を提供している開発分野、EUとして世界で最も意欲的で法的拘束力のある温室効果ガス削減目標を掲げている気候変動分野などは、その最適な例である。特に、2015年に合意した「持続可能な開発のためのアジェンダ2030(2030開発アジェンダ)」とパリ気候変動協定という、現代が抱える2つの重要課題に関する野心的な目標に向けた取り組みが本年は本格的に動き出す。EUはG7が率先して実績を出し、力強い結束を示すために積極的に後押ししたいと考えている。

G7広島外相会合に出席するEUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長。会合では、テロ、難民問題、ウクライナ問題、さらにアジアの問題や海洋安全保障などについて意見交換が行われる予定  © European Union, 1995-2016

国際的な対立や地域紛争の解決もG7の優先議題の一つで、EUが積極的に取り組んでいる。昨年7月の歴史的なイラン核合意では、モゲリーニ上級代表自らが長期にわたる厳しい交渉で主導的な役割を果たしたことは記憶に新しい。このほかウクライナ情勢やシリア情勢、そして核・ミサイル実験が懸念される北朝鮮問題をはじめ、より一般的には、大量破壊兵器拡散の抑制についても、G7各国とともに引き続き解決に向け取り組んでいく。

昨今、ますます多くの国や地域がテロの脅威にさらされており、難民・移民の大量発生は長期化する地域紛争が原因となっている。この2つの問題への対応には包括的なアプローチが必要であり、G7内での協調はもちろん世界各国が一致団結することが欠かせない。また、最近の南シナ海での動きは、地域の安全保障を脅かす可能性のあることから、国際法に則り平和的手段で解決するよう促すことが望まれる。

日本各地で開催される閣僚会合とEUからの参加予定者

EUからの参加予定者および会合に臨むにあたってのEUの考え方は下記の通り(2016年4月1日現在)。

外務大臣会合 4月10日~11日 フェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表
兼欧州委員会副委員長
> EUの考え方は前述のとおり
広島県広島市
農業大臣会合 4月23日~24日 フィル・ホーガン欧州委員会委員
(農業・農村開発担当)
新潟県新潟市
情報通信大臣会合 4月29日~30日 アンドルス・アンシプ欧州委員会委員
(デジタル単一市場担当)
> EUの考え方はこちら
香川県高松市
エネルギー大臣会合 5月 1日~ 2日 ミゲル・アリアス・カニェテ欧州委員会委員
(気候行動・エネルギー担当)
福岡県北九州市
教育大臣会合 5月14日~15日 ティボル・ナヴラチチ欧州委員会委員
(教育・文化・青少年・スポーツ担当)
> EUの考え方はこちら
岡山県倉敷市
環境大臣会合 5月15日~16日 カルメヌ・ヴェッラ欧州委員会委員
(環境・海事・漁業担当)
> EUの考え方はこちら
富山県富山市
科学技術大臣会合 5月15日~17日 カルロス・モエダス欧州委員会委員
(研究・科学・イノベーション担当)
> EUの考え方はこちら
茨城県つくば市
財務大臣・中央銀行総裁会議 5月20日~21日 ユルーン・ダイセルブルーム ・ユーログループ議長(左)
ピエール・モスコビシ欧州委員会委員
(経済金融問題・税制・関税担当、右)
加えて欧州中央銀行(ECB)の代表
宮城県仙台市
首脳会合 5月26日~27日 ドナルド・トゥスク欧州理事会議長(左)
ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長(右)
三重県志摩市
保健大臣会合 9月11日~12日 ヴィテニス・アンドリュカイティス欧州委員会委員
(保健衛生・食の安全担当)
兵庫県神戸市
交通大臣会合 9月24日~25日 ヴィオレタ・ブルツ欧州委員会委員
(運輸担当)
長野県軽井沢市

※各委員の略歴等はこちら

香川・高松情報通信大臣会合に向けたEUの考え方
今回の会合では、除法通信技術(ICT)に関するG7憲章に合意することが主な成果となるだろう。憲章は5月の首脳会合で承認される。EUは、現在取り組んでいるデジタル単一市場構築に関わる主要政策への理解を働きかけ、特に国境をまたぐ電子商取引(eコマース)の可能性を切り拓き、通信網と革新的サービスのための公平な競争の場を確保し、デジタル経済の潜在的成長力を最大にすることに向けた自身の経験を共有することで、G7会合に大きく貢献したいと考えている。

社会経済のデジタル化はますます加速しており、次世代通信ネットワークの必要性も高まっている。そのインフラの候補となっているのが第5世代移動通信システム(5G)だが、グローバルな相互運用性を確保し、スケールメリットを最大限に引き出すためには国際的な協調が欠かせない。

倉敷教育大臣会合に向けたEUの考え方
教育は個人・社会いずれの成長にとっても欠かせない役割を担っている。特に高等教育は知識に基づく成長と繁栄をもたらすとEUは捉えている。EUは2010年に策定した10カ年経済成長戦略「欧州2020」の中で、2020年までに若年層の40%が高等教育を修了できるようにするという目標を掲げている。しかし、グローバル化が進む中で教育のあり方そのものも変化する必要がある。

そのための対応の一つとしてEUではG7諸国や途上国を含めたさまざまな国への留学や交換留学を奨励。留学生をサポートするためのプログラムとしてエラスムス・プログラムやマリー・スクウォドフスカ=キュリー・アクションを用意している。教育・研究・ビジネス、この3つの「知のトライアングル」によってイノベーションはもたらされる。今回の会合では教育における革新を推進するためのEUの蓄積された経験と実際の取り組みや考え方をG7のメンバーと共有し、平和で繁栄し持続可能な社会の構築に貢献したいと考えている。さらに詳しくはこちら

富山環境大臣会合に向けたEUの考え方
今回の富山会合は、2009年にイタリアがG8議長国であった際に同国シラクサで開催されて以来の環境大臣会合である。富山では資源効率や生物多様性、2015年9月に国連サミットで採択された2030開発アジェンダの実施、そして気候変動問題、特に2015年12月に開かれた国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回締約国会合(COP21)でのパリ合意に関して、G7それぞれの取り組みについて意見を交わす重要な場となろう。EUは昨年始動した以下の取り組みについて、G7環境大臣による新たなコミットメントを取り付けたいと考えている。

  • EUが推進してきた幅広い循環型経済の枠組みにもつながる、「資源効率性のためのG7アライアンス」
  • G20の関心を呼ぶであろう「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」 
  • 生物多様性に関するコミットメントを踏まえたG7エルマウ進捗報告書。これは富山閣僚会合で、生物多様性保護に関する新たな取り決めを結ぶ上での足がかりとなる

茨城・つくば科学技術大臣会合に向けたEUの考え方
EUは、議長国日本が掲げる次の5つの議題について、全人類のため目に見える成果を挙げることを目指し、G7のパートナーと協働し、積極的に行動する。

  • Global Health 保健医療と科学技術
  • Gender and Human Resource Development for Science, Technology and Innovation 次代を担う科学技術イノベーション人材の育成
  • Inclusive Innovation 持続可能な経済成長モデルの構築
  • Open Science サイエンスの新たな時代の幕開け
  • 昨年ベルリンで開催された科学技術大臣会合におけるコミットメントのフォローアップ(海洋の未来、貧困に起因する疾病・顧みられない熱帯病、クリーンエネルギーについて)

EUでは「ホライズン2020」と銘打った研究助成プログラムを2014年に始動。2020年までの7年間に総額800億ユーロ(およそ10兆1,600億円-2016年4月の公式レートによる)を投入し、世界中の研究者にも参加を呼びかけ、あらゆる分野の広範な研究活動に資金を分配している。それはG7閣僚会合で取り上げられるさまざまな分野の課題解決の施策にも貢献している。

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EUのビジョンと今回のG7議長国・日本が掲げる優先議題には多くの共通項があるが、人権意識や民主主義において同じ価値を共有し、国際協力と法の支配、平和的な解決、多国間主義に基づいたアプローチを是とする両者であれば至極当然のことだろう。今回のサミットでもG7の強固なパートナーシップによって、多くの成果が生み出されることが期待される。

 

関連情報

G7伊勢志摩サミットの 公式HP