2015.1.16

FEATURE

新駐日大使に聞く日・EU関係の今後

新駐日大使に聞く日・EU関係の今後
PART 1

日本とEUの関係を新しい次元に

2014年12月19日に天皇陛下に信任状を捧呈し、正式に就任を果たしたヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ新駐日欧州連合(EU)大使。在日ルーマニア大使館での勤務や駐韓国・駐中国大使の経験もあり、2011年から4年間、ブリュッセルでEUの外務省にあたる欧州対外行動庁(EEAS)のアジア・太平洋本部長を務めてきた対アジア外交のエキスパートである。多国間協力を重んじ、東洋文化にも造詣が深い新大使に、これからの日・EU関係や日・EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)および自由貿易協定(FTA)交渉の行方、さらに任期中の目標や外交哲学について聞いた。

重要なパートナーである「日本」に赴任できて光栄

―駐日EU大使となられた感想を教えてください。

天皇陛下へ信任状を捧呈するため、皇居に到着したイスティチョアイア=ブドゥラ大使(2014年12月19日) 提供: 宮内庁

他の多くのアジア諸国の中でも、日本はEUにとって生来のパートナーと呼ぶべき存在です。特にこの4年間は、アジア・太平洋本部長として47の国や地域との外交関係を管轄しながら、日本とさらに強固な戦略的パートナーシップを築くことに注力してきました。この目標の実現には、現地でパートナーと間近に接することが有効ですので、駐日EU大使という職責を与えられたことは大変光栄です。

私は1992年4月から約4年間、在日ルーマニア大使館の副代表・公使参事官を務めました。東京への赴任は約20年ぶりです。当時、ルーマニアの外交官として知り合った日本の外務省や研究機関、ビジネス界の友人たちは、今ではそれぞれに重要な職責を担うようになっています。旧友たちの助言や助力を得、新しい友人の輪も広げながら、EU代表部の外交官としてさまざまな問題の解決に取り組もうと思います。日本社会や近隣諸国も変わり、EU自体も変わりました。このような新時代への移行期に、戦略的パートナーシップを強化する役割を担えることにやりがいを感じています。

従来以上にアジア諸国との関係強化を重視していく

―対アジア外交のエキスパートとして、日本を含むアジアとの関係をEUはどのように考えているのでしょうか?

キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表(当時、左)とともに中国側との会議に臨む欧州対外行動庁アジア・太平洋本部長時代のイスティチョアイア=ブドゥラ大使(右) (2013年4月、北京)

アジアは世界で最もダイナミックな地域の一つであることが、ここ数年の間に証明されてきました。EUは、アジア諸国との関係をこれまで以上に強化してきています。戦略的パートナーである日本、中国、韓国、インドをはじめ、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国や、他の南アジア諸国とも関係強化を進めています。戦略的パートナーとは 、二者間の関係を強化しながらも、それを超越した目標を共有し、双方の経験を活かして、他国のために力を合わせていかなければなりません。

アジアにおいては、ASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議などで、EUが多国間関係の構築を支援している地域もあります。EUのヴァンロンプイ欧州理事会議長(当時)が、2014年10月にイタリア・ミラノでホスト役を務めたアジア欧州会合(ASEM)第10回首脳会合では、各国首脳が欧州とアジアの政治的、経済的、社会的な関係を拡大するための議論を交わしました。その中で日本は、アジアと欧州の関係を拡大する複数の案件で実質的な貢献をしています。日本とEUにとっては、まさに「アジア」が地域協力の重要な舞台となっているのです。

―日中韓の歴史認識をめぐる外交問題についてはどのように考えていますか?

日本、中国、韓国はみな、EUの戦略的なパートナーであり、3 国間の良好な関係を望んでいます。さまざまな問題を共通の脅威と捉えて、解決に取り組む賢明さを各国の指導者たちが持っていると信じています。1997年には、アジアの金融危機を中国、韓国、日本、東南アジア諸国が協力して乗り切りました。

2014年10月のASEMサミットや11月の北京のアジア太平洋経済協力(APEC)サミットなどの一連の重要な首脳会議における日本の貢献は、近隣諸国との新しい関係を築くための正しい道筋として、EUも歓迎しています。対話と協力の機会を捉えようとする安倍総理の取り組みを評価するとともに、さらなる進展を願っています。またEUは、自らの地域統合と多国間協力の経験を生かし、北東アジアの3カ国間協力に貢献することを望んでいます。「歴史」や「違い」を乗り越え、共通の目的を見出す可能性に期待しています。

―大使の着任とほぼ同時期に入れ替わったEU主要機関の首脳陣をどのように見ていますか?

昨年11月にジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長が就任し、EUの変革を目指す新しい政治指針の下、大規模な投資計画をはじめとする新規プログラムを打ち出しました。また12月には、ドナルド・トゥスク前ポーランド首相が欧州理事会の常任議長に就任するなど、変革のチャンスが訪れています。EUは政治的な英知を駆使した改革により、一層の協力強化と統合の深化を図っていきます。例えば、金融面においては、「銀行同盟」を発足させるなど、EUは世界規模の金融危機にも対処しうる仕組みを政治的に生み出しています。

トゥスク欧州理事会議長は、既にEU内部での改革に力強く取り組んでいます。EUには、変化を乗り越えてきた歴史的経験があります。こうした経験を通じて、EUが信頼に足るパートナーであることを、日本はもとより世界各国に示すのも重要でしょう。

―EUは内外にさまざまな問題を抱えていますが、現状をどのように捉えていますか?

2011年から2012年にかけてアラブ世界で巻き起こった民主化運動、いわゆる「アラブの春」において、EUは同地域の市民の期待に応えるべく、民主主義と人権を促進させる改革を支援してきました。またEUの経済政策に対する評価や期待の高さは、ウクライナ、モルドバ、グルジアなど東方諸国との関係強化からも証明されています。不幸なことに、現在ウクライナ東部には危機が存在します。ロシアによるクリミアの不法な併合を認めることはできません。しかし同時に、EUは欧州の平和と安定のため、これからもロシアと協力しながら問題解決に取り組んでいくことを望んでいます。EUが抱える問題については日本の友人たちも理解し、パートナーとして欧州とどのように連帯していけるかを模索しています。現在は、日欧が力を合わせてさまざまな問題に取り組むチャンスの時といえるでしょう。

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