2012.2.17

FEATURE

欧州債務危機への対策相次ぐ

欧州債務危機への対策相次ぐ
PART2

バルニエ金融担当委員、来日

来日した欧州委員会のミシェル・バルニエ域内市場・サービス(金融含む)担当委員は1月20日、「欧州における新たな経済・金融ガバナンス」と題し、欧州債務危機に対するEUの対策について東京都内で講演した。

講演要旨

講演するバルニエ委員(2012年1月20日、東京)
Photo by T. Hanai. (C) EU, 2012

今回の危機は、米国で起きたサブプライム問題に端を発した世界的金融危機の抑制のために講じてきた景気刺激策の負担で、累積債務が重くのしかかる中で起きた。各国の財政赤字は深刻なものになり、ユーロ圏の公的債務は2010年にGDP比85%に膨れ上がった。

何よりも我々は、EU(27カ国)、ユーロ圏(17カ国)の信用が損なわれたことに苦しんでいる。2012年の成長率は0.5%程度にとどまり、景気の停滞が予想される。我々は教訓を引き出し、決意をもって根本的な問題に対処するための構造的な対策を講じてきた。この野心的な試みは過小評価されるべきではない。EUは、現在税制面などで改革を行い、共通政策により経済同盟を確立しようとしている。これは15年前の通貨統合が始まった当時ではできなかったことだ。

「ユーロは終わりだ」との声もあるが、欧州はより良い体制を整え、強くなっていく。緊急措置だけでは不十分で、構造的弱点に対する手当てが必要だ。過去数カ月間に行われた、欧州安定メカニズム(ESM)創設の決定、新財政協約の合意、ユーロ圏の密接な協調といった一連の改革はこれまで前例のないものだ。長期的な信用・安定の回復に向けた政治的決意は固い。

金融規制の分野においては、G20のアジェンダとも足並みを揃えたロードマップで実行に移していく。欧州委員会が検討しているのは銀行、金融市場、保険会社を欧州全域で監督する機関を設置することだ。G20に続いてEUはそれにより次の4つの目標を達成する。

1)金融部門の構造改革を行い、金融機関の安定強化と機能改善を図る。ヘッジファンドの新ルールを設け、格付け機関には多様性と透明性および競争を求める。

2)金融市場の効率、公正、透明性を改善する。年間600兆ドル相当の取引があるデリバティブ(金融派生商品)市場の透明性が最も必要。

3)消費者の信頼回復のため、現在の預金保証のほかにも手数料の透明性、投資家にわかりやすい情報提供といった、よいガバナンスのためのルール作りを行う。

4)納税者にこれ以上につけが回ることがないよう、危機予防と解決のための枠組みを導入する。

バルニエ委員の講演は駐日EU代表部と日欧産業協力センターが共催したセミナー「金融市場の信用回復に向けて:欧州連合(EU)と日本の対策と今後」の基調講演として行われた(2012年1月20日、東京)
Photo by T. Hanai. (C) EU, 2012

加盟国間で協調し、賢明な規制を考えていくが、それでもまだ不十分である。欧州市民は、雇用、成長、競争力を高める政策を求めている。私のもうひとつの仕事は、さまざまなツールを提供していくことだ。欧州の域内市場には、5億人の消費者、2万2,000の企業が存在する。これは我々にとっての切り札であると同時に世界のパートナーにとっても重要だ。欧州から複数の成長拠点が生まれるようにしたい。

アジア地域で重要な役割を果たしている日本とは、さらに開かれた市場に向け、対話を強めたい。安定、進歩、平和を望む我々は、日本とはwin-winの関係で肩を並べ、一緒に仕事をしていきたい。

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